第6章 悪夢の後日談
シュールである。
ライブラのリーダーのデスク。
そこにいつもの精悍なクラウスさんはいない。
体重1tにもなる超巨大ヒグマがでんと居座り、デスクワークをしていた。
「クラウス、この情報に関する処理はどうする? 次の三つの選択肢から選んでくれ」
「坊ちゃま。この書類に決済印を押してよろしいでしょうか?」
クマ……じゃないクラウスさんは前足を動かしたり、鷹揚(おうよう)にうなずいたり。
クラウスさんも何やかんやでヒグマになっていた。
私と同じく、知性と理性はそのまま。
だけど、何せクマなので手を使った業務は出来ない。コミュニケーションも取りにくい。
なのでギルベルトさんが代理で判を押したり、スティーブンさんが選択肢を作って判断を仰いだりと、シュール極まりない様相になっていた。
ちなみに私は、現在猫になってることもあって、再度クマ化したクラウスさんに無関心。
……というか人間のときの比ではない体格差なので、絶対近づかないようスティーブンさんから厳命されております。
「あーあ、チビに続いて旦那も動物化かよ。もう動物園かっての」
ソファで一人、孤独にモン○ンで遊んでるのはザップである。
「そうね。クマに子猫に猿までいるなんてね」とチェインさん。
すかさずザップさんは飛び起き、
「ンだと! ならてめえは雌牛か!? 乳しぼってやろうか、コラっ!」
品のなさすぎる発言を大声でかましやがった。
ツェッドさんもあきれ果てた声で、
「セクハラ発言は止めて下さい。同じ空間にいるのが恥ずかしくなります」
「お! 魚もいやがったか! てめえは水族館に帰れ魚類っ!!」
「あなたこそ猿山に帰って下さい」
かくて、壮絶な戦闘を開始するザップさんとツェッドさん。
あとスティーブンさんの血管が切れそうだ。
「可愛い可愛い! カイナっち! 元に戻るまでうちに来ない~?」
私を猫じゃらしであやすK・Kさん。
いや、元気盛りのご子息がお二人いるご家庭はちょっと……。
とか思いながら、一心不乱にじゃれついていると、
「クラウス。どうした?」
「お坊ちゃま?」
スティーブンさんとギルベルトさんの声。
見るとクラウスさんが伸びをし、デスクからのそのそと歩いてくるところだった。
まっすぐ私の方に……。