第6章 悪夢の後日談
「いや君への裏切りだけは断じて……というか出会った当初からの、君のアラスカヒグマへの病的な執着の理由を問うてもいいだろうか?」
「うっさいっ!! この依存症がっ!!」
げしげしと相手を蹴りつける。紳士は私を見上げ、困り果てた顔で、
「カイナ……申し訳ないが、少し私から見え――」
はい、わたくし今、ノーパンでございます。
「……う、うう……」
ついに涙がこぼれた。私は脱力しベッドに座り込む。
「カイナ!?」
クラウスさんが慌てて起き上がる。私をギュッと抱きしめ、
「すまない。本当に、すまない……どうか私を嫌わないでほしい」
「こ、怖かったんだから……! ホントに怖かったんだからねっ!!」
分厚い胸板をバンバン叩き、訴えた。
力の差、体格の差、それをもって意志を無視して押さえこまれる。
その恐怖は、体験でもしないと分からないだろう。
「またあんなことしたら、絶対に許さないんだから……!!」
胸の中で泣く私を、クラウスさんはあやすように揺らした。
「分かった。君の慟哭が、私を罰する何よりの洪水となった。
誓おう。もう二度と、あんなことはしない。決して……」
その言葉には真実がこめられている気がした。
「本当?」
「魂をかけて誓う。君に、二度と無理強いはしないと!」
クラウス・V・ラインヘルツがそう言うのなら、それは真実になるのだろう。
私の心の嵐もようやく収まり、凪が訪れる。
私はクラウスさんの腕の中で深呼吸し、
「……クラウスさん、連れて行ってくれるって言った店、明日でも大丈夫ですか?」
「っ!! もちろん! もちろんだとも!!」
クラウスさんが嬉しそうに何度もうなずく。
私も安心して、やっと大きな胸に自分を委ねることが出来た。
そして私たちは長い長いキスをした。
…………。
何だろう。事が解決したらしたで、ちょっとムラッとしてきた。
「じ、じゃあクラウスさん。仲直りに……」
顔を離してから、私は顔を赤くし、もじもじと言った。
実はノーパンという、あまりやらないシチュに、ちょっとうずくものがあった。
……私もたいがい、変態になりつつあるのかもしれない。