第6章 悪夢の後日談
恋人にした相手が悪かったという他ない。
クラウスさんはそこらを歩いている一般人ではない。
週数回のペースで世界を救ってるお人。
本来なら後世に永く語り継がれておかしくない、偉大な功績を持つ英雄なのだ。
……つか、番頭の長口上がマジきつい。
私が帰らない限り正論のお説教が続く無限ループだよ、これ。
「うちに帰ります……お、お金はお持ち帰り下さい……」
そう言うしかなかった。
「ありがとう。君なら理解してくれると思っていたよ」
そして神妙にうなずくこの男とは、いずれ決着をつけようと誓ったのであった。
…………
…………
「…………カイナ」
クラウスさんは静かに私を見下ろしている。
私はキングサイズのベッドに横たわり、
「ど、どうぞ……好きにして、いいですから」
ネグリジェの裾をまくり、誘った。下着は履いてない。
家に戻り、持ち出した荷物を片付けるより先に、クラウスさんを誘った。
「何でもしていいです。私が痛がるのが興奮するって言うのなら、またそういうプレイでもいいし……」
媚びた笑みを見せたつもり――だったが、実際には青ざめ震えていた。
「……!」
クラウスさんが手を伸ばしてきたので身体を強ばらせたが、けど彼は私の手を離させた。
そしてそっと裾を戻し、私の下半身を隠した。
「誰かに……何かを言われたのだろうか? 私の凶行を赦し、何をされても耐え忍べと」
「い、いえ……」
素直にバラせば間違いなく、リーダーと副官との間に深刻な亀裂が生じる。
それだけは避けなくてはダメだ。世界の均衡のために。
クラウスさんがベッドに乗る。
スプリングがギシッと鳴り、全神経が緊張する。
「私は決して諦めない」
「?」
クラウスさんは私の腰に手を回し抱き寄せ、耳元で語りかける。
「私と君が、共に満足し、君が幸せになる道を。
だから君は堂々と怒って欲しい。私の暴走を止めるために」
「え……」
「私は愚かだから、境界線を提示されなければ度を超してしまう。
そして君が笑顔で耐えることこそが、最もあってはならないことだ」
「でも……戦闘に影響が……」
「それは私の弱さが生み出す結果のこと。君が耐える理由にはならない」
キッパリ言い切った。