第6章 悪夢の後日談
冷たい風が吹きすさぶ。
私は冷酷なまなざしで、
「例え婚約者、いえ夫婦であろうと同意のない強要は犯罪。頭の良いあなたが知らないわけがありませんよね?」
「も、もちろんだとも……だが――」
「ご自分のしたことを自覚してるから、デートで埋め合わせしようとしてますよね? つまり金で解決しようとしてますよね?
それ、殴った翌日に土下座するクソDV男と同じレベルだと思いません?」
「……カイナ……すまなかった。反省している。どうか……罪深き私に慈悲を……」
もはや捨てられた子犬の目で、よろよろとこちらに手を伸ばしてくる。
だが私はそれを振り払い、氷点下の目で、
「このことをギルベルトさんやスティーブンさん、あなたを慕う大勢の人には一言も告げず、私の胸に留めていますが、その時点で慈悲ではありませんか?
あなたのご両親ご兄姉に訴えようかとも思いましたが、あの立派な方々がどれだけお嘆きになるかと想像し、止めました。
万が一、それでご実家のバックアップがなくなれば、ライブラの財政にも響きますしね。
組織のため、あなたを愛し信頼する多くの方々のため、私は昨晩のことを自分一人の胸に秘めています。
それはあなたには慈悲とも思えない、私がやって当然、当たり前のことなんでしょうか?」
淡々と一息で告げた。
あ。クラウスさん、真っ青を通り越して顔面蒼白になっている。
マジで血を吐くかも。
「すまない……申し訳ない……君の慈悲深さに甘え、私はいつも同じ過ちを……」
胃を押さえ、悲嘆にくれている。
まあ私がこれだけ突き放すのも久しぶりか。
でもそれくらいの嫌味は許してもらえないだろうか。
服の下には、表に出せないアザがいくつもあるし、正直寝ていたいくらい身体が辛い。
この人間兵器と寝るのは、それだけ身体的負担がある。
そう。昨晩はひどかったのだ。
…………
殿方は戦場で気が昂ぶると、生存本能から性欲が強くなると言う。
クラウスさんも例に漏れず戦闘後は、いつもより求めてくる。
でもその日は私も連戦で限界だった。その前には三日徹夜していたし。
今日という今日は相手を出来ない。
くたくたで疲れ切っている。どうか休ませてほしい。
懇願したけど、ケダモノは私を押し倒した。