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【血界戦線】紳士と紅茶を

第2章 告白(上)



「ではカイナ。聖書を開いて。今日は詩編の――」

「はいっ」

 夕暮れになり、どうにか本日の講義が終わってくれる模様であった。
 これはクラウスさんが読むのを聞いて本文を追って、分からない単語があれば意味を聞くだけなので楽である。
 そして本を構えた私の横で、クラウスさんは静かに語り出す。

「He heals the brokenhearted and binds up their wounds.
(主は心の打ち砕かれた人々を癒やし、その傷を包まれる)」

 厚い霧のもやを通して運ばれる、夕刻の淡い光の中、クラウスさんの落ち着きのある声が響く。

「Great is our Lord and mighty in power; his understanding has no limit.
(私たちの主は大いなる方である。御力は強く、その英知は計り知れない)」
 
 時々意味は分からないけど、基本的に神様がどんなすごい人かーみたいなことを言ってる。
 でも私は、そういう箇所は聞き流してしまう。
 尊敬する人が讃える相手を、理解したいと思わない人間はいないだろう。
 でも処女懐胎ありえなーいとか、宗教で戦争起こってね?とか理屈ばかりが先に立って、その先にいけないから寂しくもある。
 それに私は――神様は信じられない。信じたくない。

「Let them praise the name of the Lord, for at his command they were created.
(主の御名を褒め称えよ。主が命じられ全ては創造された)」

 クラウスさんがページをめくる音が響く。
 この人の口から出るのなら、全てが心地良い。
 駄目だ……。寝たら失礼だと思うのに……だんだん、まぶたが……。

「カイナ?」

 ついに私は、すやすやと寝てしまった。

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