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【血界戦線】紳士と紅茶を

第6章 悪夢の後日談



「うわ!!」

 たちまちクラウスさんは、レオナルドさんの指した方向に猛然と走っていく。

 私は振り落とされないよう、クラウスさんの背にしがみつき、目をこらす。
 いや目をこらすまでもなく、見上げるようにデカい触手の親玉が見えた。
 これまた十メートルはあるだろうか。

 今まさに獲物を急速消化しながらデカくなっていく。
 さすがにアレはパンチだけでは破壊できない。
 クラウスさんは止まり、様子をうかがうように頭を低くする。
 
「クラウスさん! 私のゴーレムを出します! 二人でやっつけましょ――て……は、吐くっ……!!」

 私は口を押さえた。
 暴れヒグマに十数分乗り続けて、三半規管がどれだけやられたとっ!!

 私はクラウスさんから飛び降り、道端でしゃがみこみ、ヒロインにあるまじき行為に及ぶ。
 クラウスさん! 心配そうに鼻面で背中を撫でてくんなっ!!

 
 そしてどうにか収まり、魔術で出した水で、口をすすいで立ち上がった。
 クラウスさんはというと、私めがけて襲いかかる触手を次々に殲滅してくれてるとこだった。

「クラウスさん、さっき言ったとおり二人で――ん?」

 クラウスさんは私が回復したのに気づくと、何か言いたげに口を動かす。
 何かを伝えたいらしい。

「ん? 何? 何ですか?」

 目で何か訴えられても、分かりませんって!
 ああもう、何のための婚約者だ。こんなとき意思疎通出来ないなんて。
 するとクラウスさんは、触手と戦いながら周囲を走り――私の前に何かを置いた。

『 | | | 』

 図にするとこんな感じだ。等間隔に置かれた木の棒が三本。
「”川”の字? 私に激流を出してほしいとか? え? 違う?」

 クラウスさんはもどかしげに地面をひっかく……え、ええと、ええと……。

 私は悪い頭を必死にいじくり回し――。

「縦線……1……111――111式!?」

 クマさんはうんうんと、猛烈に頭を上下させる。
 えーと、血闘術使うんですよね? それならやれば――。

 ハッとした。

「まさか声が出せないから、私に技名叫べって言うんですかっ!?」

 クラウスさん、またもうんうんとうなずいた。

「いや緊急事態なんだから、叫ばなくてもいいでしょうが!!」

 しかしクマさんは首を左右に振る。

 何で!!

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