第6章 悪夢の後日談
のしのしと、巨大ヒグマに乗ってヘルサレムズ・ロットの往来を歩く。
異様なものを見慣れてる住人たちも、さすがに驚いたみたいで、どよめきつつも道を開けてくれた。
街は流れ星による大混乱で、あちこちでパトカーのサイレンが鳴り響いている。
「もう。あなたのせいですよ、クラウスさん。コタツを私に返して下さらないから悪いんです」
苦言を呈すると、クラウスさんは首をかしげた。
私たちはライブラからほっぽり出された。
今日は休んでいろとの、副官様からのお達しであった。
「とりあえず、家に帰りましょうか」
クラウスさんはうなずき、家路をたどる。
「しかしいきなりクマになって、どんな感じなんですか?」
クラウスさん、何か言いたげに口を動かすが、変なうなり声が出るだけだった。
クマだとコミュニケーション取りにくいなあ。
耳をひっぱったり頭を撫でたりすると、クラウスさんはちょっと目を細める。
そして家についたのであった。
…………
「ふわ~。幸せ……」
リビングでクラウスさんに横になってもらい、私はそのお腹にもふっと埋もれ、恍惚としていた。
獣っぽい臭いは全くせず、クラウスさんが趣味でやってる土いじりの匂いや、洗い立てのシャツの匂いがした。
クラウスさんは穏やかな目で、私を見ながら、時折鼻先で私の匂いをかいでくる。
窓からは、暖かな昼の光。風はそよそよ。私はうとうと。
クマさんも大あくびをする。
そして私たちはすやすやと、まどろみの中へ――。
……地面を揺るがすような爆音で飛び起きた。
何だって、まったりさせてくれないんだ、この街は!!
クラウスさんが身を起こしてうなり、私は慌ててリビングのモニターをつける。
すぐモニターに、この家とライブラ事務所周辺が映し出された。
モニターでは爆煙が上がり、生体感知センサーが巨大な触手生物の外観をとらえていた。触手は周囲の生物を次々に補食しているのが見える。
「第二十四符!『紫衣(しい)』!!」
私の魔術に応じ、呪符から偵察用の雌白猫が出現。スルッと窓の隙間から外に飛び出した。
「――て、クラウスさんっ!?」
アラスカヒグマはヤル気満々。
雄々しく咆吼を上げて、頭を下げ、私を見てた。