第6章 悪夢の後日談
クラウスさんを抱きしめると、クラウスさんも私に顔をすり寄せてくれる。
「ああ、もう幸せっ!!」
「……今、『幸せ』って言いましたよね」
「クラウスさんがクマになったことを、心の底から喜んでますよね」
ツェッドさんとレオナルドさんがぼそぼそ言ってるけど聞こえないっ!!
一方、スティーブンさんはニコニコと、
「なら聞くが、カイナ。堕落王が星を降らせた時間……昨晩の二十時頃、君は何をしていた?」
「え? いつも通りですよ? クラウスさんのお帰りを待ちながら、木彫りのクマを彫っていて――」
「木彫りのクマ!?」
「いつもそんなことをしてんですか!?」
またもツェッドさんとレオナルドさん。
「お恥ずかしいです。クラウスさんご本人を彫るのはやはりまだ技術が足りず――」
「いえ我々が驚いた点は、そこではないのですが」
「そのうちホントに、クラウスさんのゴーレム作っちゃいそうですね、カイナさん」
なぜ怯えた顔をする、貴様ら。
「変な意味はありませんよ。単なる暇つぶしです。
一彫り一彫り、クラウスさんの健康やお仕事の無事や交渉の成功を祈願し、たまにはさっさと寝ろと祈りを込め、いい加減にコタツを返せクマ野郎と怨念を練り込み――」
「そういうわけで、カイナは責任を取って三ヶ月の減給処分な。解散」
と靴音立てて立ち去るスティーブンさん。
「何で!?」
クラウスさんにしがみついたまま、ショックを受けるが、
「いやどう聞いてもおまえが犯人だろうっ!!」とザップさん。
「私は無実です! 木彫りのクマを彫ってただけじゃないですか!!」
「呪いの人形作ってただけだろうがっ!! それに『流れ星』が当たって変な風に願いが叶っちまったんだよ!!」
「そんな馬鹿なーっ!!」
絶叫する私と、ツッコミに忙しい皆さん。
クマになったクラウスさんは私のかたわら、人間の言葉も話せずオロオロしていた。