• テキストサイズ

【血界戦線】紳士と紅茶を

第6章 悪夢の後日談



 というかクラウスさんのお仕事の邪魔をしてしまったな。

 これではクラウスさんが腕を動かせない。
 私は腕から頭を起こした。
「あ……」
 クラウスさんは、まるで飼い猫が離れたみたいなお顔。

「カイナ。寝ていて構わない」
 そんなわけがあるか。

 じゃ、どこで寝ようか。

 私はクラウスさんの両腕の間を歩き――よしよし、あのネクタイにしがみつけそうだ。

 せーの!

「あ!」

 ジャンプしたけど距離が足りず落っこちる。

「おっと」

 予測していたらしいクラウスさんにパシッと手で受け止められた。何たる屈辱。

「危ないことはよしてくれたまえ」

 わたくし、クラウスさんの手の中でジタバタ。

「離して下さい、クラウスさん。私は冒険の最中なのです」
「ふむ?」

「ネクタイから肩へ至り、頭のてっぺんに登頂する所存」

 頭頂だけに。くっ……くくくくく!

 クラウスさんは私を手の平に載せ、ニコニコ(怖い)。

「魅力的な提案だが、君が転がり落ちる危険がある」
「わ!?」

 上からすぽっとクラウスさんの逆の手が下りてきた。
 私はクラウスさんの両の手の中に閉じ込められた。
「ここで休みたまえ」
「何するんですー!!」
 怒って隙間から逃げようとジタバタしたけど、デカい手はてこでも動かない。

 しばらくモゾモゾし……モゾモゾ……。
 疲れた。温かい。

「…………」

 クラウスさんの閉じた手の中で、すやすやと寝てしまった。

 …………

 …………

 しばらくして起きると、何だか狭い場所にいた。
 どこ? 出る。もぞもぞしていると、

「カイナ。危ない」
 温かいものがやんわりと私を抑える。

「???」
 大きな布に包まれているようだった。
 私は上部の隙間から顔を出す。
 
 おお、クラウスさんの胸ポケットだ。
 
 景色を楽しんでいると、大きな指先で頭を撫でられた。

「もう少しで仕事が終わる。待っていてほしい」

 頭上にクラウスさんの顔が見える。
 慈愛の目で私を見ていた。

「はい!」

 安心して微笑んだ。

「……で、俺ら、いつまであのバカップルを見させられるんすか?」
「明日には直るそうだ。辛抱しろ、ザップ」

 ギャラリーの声にヒヤヒヤしつつ、私はクラウスさんに守られ眠りについたのであった。



――END

/ 498ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp