第6章 悪夢の後日談
じろっとクラウスさんを見ると目が合った。敵は見るからに『ビクッ』として慌ててパソコン画面に視線を戻す。
全く。どいつもこいつも人を珍獣みたいに。
私は『あーん』とどデカいドーナツを頬張った。
…………
そして食べ終わったらまたソニックの背中に乗って、クラウスさんのデスクへ。
婚約者があまりにも心配そうだったので仕方ない。
といってもクラウスさんのお仕事が終わるまでやることがない。
「ふぁあ~」
あくびをする。眠い。
「眠いのかね、カイナ。待ちたまえ。今、ギルベルトに――」
「いえ。一応、招集待機中ですから寝ませんよ!」
見た目はちっこくなってるけど、魔力に影響はないので、使おうと思えば符術も使えないことはない。
今、ライブラにいる名目は一応『万が一に備えての招集待機』だ。
「時間があるので、新しいゴーレムの術式を計算していますね」
と、ドヤ顔でキめ、極小ボールペンとメモ帳で術式の構成を始めた。
「カイナ。君は本当に強い女性だ。逆境に負けず努力を惜しまぬ姿には感嘆の念を禁じ得ない」
「……あ、いや、その……ども」
毎度、クラウスさんの『相手の良いところしか見ない』にはドン引きする。
というわけで、クラウスさんのキータッチ音を聞きながら、新しいゴーレムの術式を考える。
「キキ?」
ソニックが私の手元をのぞきこむ。もう遊ばないって。
んー。音速猿のゴーレムってのもいいかな。レオナルドさんが喜びそう。
でもそうなるとスピードに能力を極振りしたいし、その場合の術式は……。
あ。いかん。やっぱちょっと眠くなってきた。
しかし固いデスクの上でゴロンとしたら、またクラウスさんが何やかんや言いそうだ。
ソニックは……あー、もうレオナルドさんとこに戻っちゃってる。
渋々、私はちょこちょこと、クラウスさんのところに歩いて行った。
「どうしたのかね、カイナ」
私が寄ってきたのでクラウスさん、ちょっと嬉しそう。
私はクラウスさんの腕にそっと頭を乗せる。
うーん。筋肉の塊だ。分かってはいたが……。
「…………」
またシャッター音がする。写真撮らんで下さいよ、クラウスさん。