第6章 悪夢の後日談
「気持ちの上では誓いを守る気でいる。ただ君の尽きない愛らしさに、結果的に約束を破る事態になっているだけだ」
「この時点からもう、守る気がないし! あと遠回しに私に責任転嫁してんじゃないですよっ!!」
「私も大変遺憾(いかん)に思っている」
「キリッとした顔で言ってもクズ発言ですからねっ!?」
うう。まさかこの方を『クズ』呼ばわりする日が来ようとは。
で、私がどんだけ怒鳴ろうが、敵がヤル気になっている時点で結論は決まっている。
私は流れるように押し倒され『行為』に入られた。
「クラウスさん!」
でも私のマジ怒りの声も、だんだんトーンが弱まって、
「……クラウスさん……私も、愛して……る……」
最終的に裸の背中を抱きしめ――いや相手のガタイがデカすぎるので、どうにか背中に手をかけるという表現が正確なのだが。
「クラウス、さん……っ!」
そして愛する人の腕の中で、私は果てたのであった。
なお『夜明けまでヤッたら殺す』という気で望んだためか、向こうも妥協して×回で済ませてくれた。
だが日付はとうに変わっていたのであった……。
…………
部屋の明かりは消えている。
私は裸の胸に抱き寄せられ、うとうとと眠りの訪れを待つ。
クラウスさんは私を慈愛の目で見ながら、時折頬を撫でる。
「ん……」
「カイナ。君がまだ早いと戸惑う気持ちは分かる」
「ん?」
声をかけられ顔を上げると、クラウスさんの優しい碧の瞳があった。
「だが、近いうちに良い答えが得られるものと期待しているよ」
私を抱き寄せ頭をポンポンと叩く。
良い答えとは? 私が渋っている正式な結婚のこと、そして――。
「君の不安は分かち合いたい。そして二人で共に最善の道を探そう。
私たちは生涯のパートナーなのだから」
「……はい」
ぎゅっと抱きつきながら、照れくさくて目を閉じた。
まだちょっと怖いし、今の気楽な関係から、次のステージに移るのも躊躇(ちゅうちょ)がある。
でもいずれ私が決意を固め、足を踏み出す時が来るんだろう。
そのときは間違いなくクラウスさんの手を握っているのだと思う。
幸せな気持ちで目を閉じた。
「おやすみ、カイナ」
世界の誰よりも大好きな人に、抱きしめられながら。
――END