第6章 悪夢の後日談
「カイナ。頼む。許してくれたまえ。愚かな私にどうか君の慈悲を」
「…………」
私はついに根を上げ、クラウスさんに向き合う。
「もう怒ってませんよ」
うっとうし……ゴホン!! あの手この手で飴をちらつかされ、渋々許すことにした。
話がこじれた原因の一端は、私が本当のことを説明しなかったからだし。
紳士はパッと笑顔になった。
「カイナ! 君の寛大な心と限りない優しさに、君への想いが募るばかりだ!
こうして、君の深き愛を得るだけで、返すことがままならぬこの身の何ともどかしきことか!」
……つかクラウスさん、もしかして未だに私が天使に見えてんのかな。
普通、とっくに目が覚めるでしょうに。
「はいはいはいはい」
ぎゅ~っと、私がつぶれない程度に強く抱きしめてくるケダモノ。
物理的にも精神的にも、あなたの方が圧倒的に与えてくれる側だし。
私でいいのかな~。そのうちもっと素敵な女性が現れたら捨てられないかな~と、今でも不安に思いますが。
「私も大好きですよ、クラウスさん」
キスをする。
やっぱり大好きだ。世界で一番、愛する人。
嫌われないよう、もっと色々頑張ろう。戦闘とか恋人としてとか。
……胸はチェインさん、家事力ではK・Kさんに圧倒的な遅れを喫しているが。
「……そういうわけでカイナ」
「ん?」
クラウスさんの手がさわっと、私のケツを撫でる。
「……っ!!」
嫌な予感がし、ガバッと逃げようとするがガシィっと抱きしめられ拘束された。
「改めて二人で愛の奇跡を祝おうではないか」
「いや寝るし! 明日から私、現場復帰だしっ!!」
夜明けまでヤラれまくって、よれよれで出勤して皆に哀れみの目で見られるとか!
そういう公開羞恥プレイはホンっっトに勘弁してほしいっ!!
「一度きりだ。約束しよう」
ジタバタする私を最小限の力で押さえ込み、私の首筋のボタンを外しつつささやいてくる。
「嘘つけっ!! この件に関するあなたの『約束しよう』は信用ゼロですからね!?」
全力で暴れるが、クマの前の子ネズミであった。