第6章 悪夢の後日談
「変態趣味に走られるくらいなら、もう好きにヤッちゃっていいですよ。つきあいますから!」
こっちから太い首筋に抱きつき、キスをした。
驚いて目を見開く婚約者に、
「……あなたは、私の最愛の人なんですよ?
嬉しくないわけ、ないじゃないですか!」
汗でよれよれになったネクタイをひっつかみ、怒鳴るように言った。
瞬間に。
「……は?」
複数のボタンが宙を飛ぶ。
何があったのかと自分の身体を見ると。
……スゴいなー。シャツどころかブラまで一緒くたにブチッと引きちぎったわ、クラウスさんー。
同時に下半身の衣類も、一つかみでビリッとやらかす。
「あ……」
「…………」
見られた。ずるっと下着を引きずり下ろされるとき、かすかに糸引いてるの、見られた。
私もたいがい、臨戦態勢だった!
ブルブル震えながら硬直している間に、バサッと衣類が床に落とされる。
「あの……クラウスさん……?」
私が『その気』だと確認が取れた瞬間から、正気が失せた顔をしておられる。
それでもどうにか眼鏡は外し、震える手でベルトを――あ、興奮のせいか上手くいかない。多分、その下で出番待ちしているアレが邪魔になってるんだろう。
「あはは。や、やってあげますよ」
「…………問題はない」
「――――っ」
引きちぎったよ。高級老舗(しにせ)ブランドのオーダーメイドの革ベルトを。紙のヒモでも千切るかのように!!
……この人、ホントに人間なんだろうか。
クラウスさん、使用不可になったベルトを忌々しそうに投げると、改めてズボンを下ろす。
「…………」
私は生のブツを凝視し、凍りつく。ヤバい。
雌を目の前に、もう我慢出来ない感じだ。
すでにダラダラこぼしてるし。
「……あ、あの……私、そういえばシャワーに入り忘れたかなって……」
完全にビビリ、ズリズリとベッドから逃げようとしたが、ガシッと抑えられた。
はぁー、はぁー、と耳元で獣の息づかい。
逃げないようにしっかりと私の両腕をつかみつつ、首筋をざりざりと舐めてくる。
前戯の一環ではない。味見である。
「く、クラウスさん……っ……」
理性と本能の間をさ迷う獣。その牙に口づけた。
「もうそういうの、いいから……早く、襲って……!」
私も、理性をぶん投げたのであった。