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【血界戦線】紳士と紅茶を

第6章 悪夢の後日談



 かくして私、薄幸の美少女カイナさん。

 ケダモノの巣に引きずり込まれ、たいそう美味しくいただかれる直前でございます。

「カイナ……愛している」
 ヤバい。ケダモノ目が超ヤバい。絶対『愛してる』って目じゃない!!
 あと見ないようにしていたが、彼の下半身、完全に臨戦態勢。いつでも出撃OKである!!

「いや、ちょっと待っ……クラウ、ス、さ……ごめ、……」
 
 まず嘘ついてたことを謝ろうとしたが、強引にキスをされました。
 息が荒い。今まさに狩り立ての獲物の血肉をすすろうとする猛獣。
 けど顔が離れたとき、

「カイナ……」
 止まった。ケダモノが止まった。

「は、はい……」
 両手首を、クラウスさんの両手に拘束された状態で硬直していると。

「……許可を。君との約束を、破ることを……」

「は?」

 この期に及んで?
 私が治るまで指一本触れないって約束の、取り消し許可が欲しいって?
 今やその前提自体が無かったことになってるようなもんなのに。

「どうか……」

 けどクラウスさんは待つつもりみたいだ。ただ切ないまでに真摯なまなざしで私を見下ろしている。

 ふと思う。

 多分、今私が拒めば、この紳士は私を逃がしてくれる。

 かといって衰弱死する気も無く、どうにかしてこの窮状を生き延びるだろう。

 強い人なのだ。

 私にはもったいないくらい。

「あ、あの、嘘ついて、ごめんなさい……」
 やっと言えた。

「謝罪するに及ばない。私のふるまいが君に恐怖心を与えたこと、ただそれを恥じるばかりだ」

 クラウスさんの手は震えている。下半身も、ズボンの盛り上がり部分が湿っているのが分かる。

 本当なら準備そっちのけでブチ込みたいだろうに、自分を押さえつけている。

「……サイドチェストの上段に拳銃が入っている」

「は?」

 クラウスさん、拳銃扱えるのか? いや扱えないことはないんだろうけど、想像がつかん。

「君を傷つけないか、憂慮の念に堪えない。だから私の獣性が君の柔肌に牙を立てたときは、それで撃ってほしい」

 どんなド修羅場っすか。

 でも、そこまでの覚悟を聞かされたらもう……。

「いいです」

「カイナ?」

「約束は無し! だから……その、抱いて、下さい!」
 
 拒めるわけがない!

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