第6章 悪夢の後日談
…………
誰かの声が聞こえる。
「どうするんすか、スターフェイズさん。これじゃ仕事にならないでしょ」
どこぞのチンピラの声が聞こえる。
「困ったもんだ。カイナに頼みたいが、投薬治療中だしなあ」
氷の番頭さんの声も。あれ、今日、食事会だっけ?
「昨日も多少ぎくしゃくしている風でしたし、この件でケガでもすれば、カイナはますますミスタークラウスに態度を硬化させるかもしれません」
心配そうなチェインさんの声。私が、何だって?
薄目を開ける。
あ、あれ? ザップさん、スティーブンさん、チェインさんたちが真剣な顔で何か話し合っている。
「知り合いの女を紹介しましょうか? 旦那みたいのが好みな奴とか、金さえ払ってくれれば何でもやる奴とか、知ってますよ?」
「クラウスがまず応じないだろう。さっき様子を見に行ったときも、自分一人でどうにか耐えてみせるから心配無用だと強がっていたくらいだ」
そこで私はもう我慢出来なくなった。
「あの、クラウスさんに、何かあったんですか!?」
ソファから起き上がると、ギルベルトさんがかけてくれたらしい毛布が、滑り落ちた。
『!!』
リビングにそろっていた皆さんが、ギクッとしたように私を振り向いた。
私は立ち上がる。
ライブラの中枢メンバー総出で、私たちの家に来るなんて。
いったいクラウスさんに何が起こったんだ!
「教えて下さい、スティーブンさん! 私に出来ることがあるんですか!? 何でもしますから!!」
「待て。ちょっと落ち着け、お嬢さん」
つかみかからんばかりの勢いで聞いたら、副官さんは周囲を見、咳払い。
「実はさっき戦闘があって――こっちに来てくれるかな」
私を部屋の隅に手招きする。
まさかクラウスさん、戦闘で重症を負われたの!?
パニックになりかけの私を見下ろし、スティーブンさんは、
「大丈夫。大丈夫だから泣かないでくれ。ただ彼は毒を受け……」
「そんな! クラウスさんはどこにいらっしゃるんです!?」
「まあまあ落ち着いてくれ、お嬢さん。命に別状は無いんだ。ただ……」
「ただ!?」
スティーブンさん、珍しく逡巡し、咳払い。
そして私を凍りつかせることを言った。
「ただその……性欲がすごく強くなってる状態なんだ」