第6章 悪夢の後日談
私が緊張を解いたせいか、クラウスさんもやっと微笑み、
「カイナ。君に口づけをして構わないだろうか。それ以上のことは決してしない」
「ええ、もちろんです。私も、キスしたいです」
「カイナ……」
顔を真っ赤にして目を閉じる。
優しいキスはすぐに落ちてきた。
その後は、ベッドに座り二人で楽しくお話をした。
話題は尽きなかったけど、時間はあっという間に過ぎた。
「カイナ。そろそろ眠りたまえ。部屋まで送ろう」
「あ、はい」
……そっか。三ヶ月は別々の部屋で寝るんだった。
言い出したの、私の方なのに。
どうして、あんなワガママを言ってしまったんだろう。
クラウスさんの部屋を出るのがとても寂しい。
「三ヶ月の辛抱だ。君の快癒を願っている。さあ行こう」
そしてクラウスさんは私の腰を抱き、部屋まで送ってくれた。
そして、
「おやすみなさい、クラウスさん」
「おやすみカイナ。良い夢を」
もう一度キスをして離れ、クラウスさんが扉を閉める。
「…………はあ」
私は独りぼっちになり、とぼとぼ歩くとベッドに倒れ込んだ。
昨日と立場が逆だ。今日は私の方が、クラウスさんに会いに行きたくて仕方ない。
あの大きな腕に抱きしめられたい、隣に寝て安心させてほしい。
「……いや、私の自業自得だし」
そのままベッドの中で、しばらくゴロゴロする。
しかし明かりを消してもどうも寝付けない。
「『もう一度キスしたいです』、いや『昼間し忘れた報告があります』の方がいいかな……いやいや『オススメの詩集をお借りしたいのですが』の方がいいかな。うん、そうしよう」
どうにかもう一度会う口実を作り、むくっと起き上がる。
私はウキウキと廊下を歩き、クラウスさんの部屋の扉の前に立つ。
「クラウ――」
扉を叩こうとして止まる。
もう寝てるかもしれない。
クラウスさんの寝付きの良さは並大抵ではない。
多忙な方だし、私のノックで睡眠のお邪魔をするのは申し訳ない。
なのでそーっと扉を開けた。
あ。クラウスさんいた。良かった。起きてた。