第6章 悪夢の後日談
その後、どうその場を取り繕ったのかは覚えていない。
どちらにしろ、それ以上の仕事は無理だった。
薬の副作用がキツくてソファで寝てたら、その間に超高速で家まで連行されてしまった。
役立たずめ。皆優しいだけに、自己嫌悪ばかりがつのる。
そして深夜になり、クラウスさんが帰ってきた。
でも私の所には寄ってこないで、そのまま自室に行かれてしまう。
私は自分の部屋で焦った。
ひ、昼間の誤解を解かねば!!
そして、クラウスさんの書斎に向かった。
「あの……カイナです。入ります」
私はそーっとクラウスさんの寝室の扉を開ける。
だが返事はない。
「あ、あの~」
クラウスさんがいた。
ベッドに座って、うなだれていた。
顔を上げもしないので、恐る恐るこちらから近づいた。
「く、クラウスさん……昼間のアレはですね……」
するとやっとクラウスさんが口を開いてくれた。
「かまわない、カイナ。私は傲慢だった。これまでも、君に数々の虐待を行い、あまりにも無神経に君の心を切り裂いてきた」
「いえいえいえいえいえ!!」
虐待とか受けてないし!!
クラウスさんが傲慢なら、全人類の99%は傲慢になるわ!!
「いやだから、別れたいとか本気で思っているわけではなく!
たまたま出た言葉というか! あなたがあまりにも立派で、存在というか格が釣り合わないと言いますか!!」
「カイナ!!」
向こうは聞いちゃいなかった。
私はガバッと、クラウスさんに抱きすくめられた。
でもいつもみたいに力任せではない。大事に大事に、野の花を扱うように優しく。
「どうか、生涯を私と共に……君への無礼千万な態度は今後一切行わないと約束しよう。だからどうか――!!」
暑苦しい。重い。私、ジタバタする。
「了解です了解です。私こそすみませんでした。だから仲直りしましょう仲直り!!」
つか、ホントのこと言った方がいいんじゃないかなあ。
『中出し百回くらいされれば、すぐ解けますよ』
…………いや、さすがに無い。それは無い。
一方、クラウスさんは感じ入ったように、
「カイナ……君は本当に天使のような女性だ。何と心優しく寛大なことか」
「は……はははは……は」
こちらは冷や汗ものだった。