• テキストサイズ

【血界戦線】紳士と紅茶を

第6章 悪夢の後日談



 そういうわけで、私たちの清いおつきあいの日々が始まった。

 といっても昼はちゃんとお仕事をしている。
 ただ薬の副作用で、長時間の集中は難しい。
 でも仕事は休みたくないと伝えたら、

「ならば資料整理をしてくれたまえ。疲れたら、長椅子でいつでも休んで構わない」
 
 ……何か猛烈に申し訳ない。

 資料室で、そうチェインさんに愚痴ったら、

「その考え方、変だよ」

 うらやましいバストの先輩は、クールにそう言った。

 私と一緒に事件ファイルの分類作業をしながら、

「治ってからまた頑張ればいいじゃない。スパッと三ヶ月休んじゃいなよ。
 クソモンキーなら喜んでそうしてる。君は今治療中なのに、治療じゃ無くて仕事を頑張ってどうするの」
「まあ、そうなんですけど……」

 アメリカンな人たちとの感覚の違いなんかな。
 こっちは、無理してでも頑張らねばと思ってしまうが。

「ぶっちゃけ、無理して回復を遅くされる方が迷惑」

 ……うう。手厳しいお言葉。
 だが、チェインさんなりに私を気遣っての物言いなのだ。

「自宅で三ヶ月療養なんてしたら、怠け癖がついちゃいそうで……何かやってたいです」

 事件ファイルを何冊か棚に戻しながら言うと、

「……ミスタークラウスのそばにいたいって、素直に言えばいいのに」

「……っ!!」

 そのものズバリを指摘され、顔が真っ赤になる。
「…………」
 耳まで真っ赤にして、何も言えないでいる私に、チェインさんは首をかしげ、

「ミスタークラウスも、これで何で君に嫌われかけてるって、思い込んでるのかしら」

 わわわわ私たちは比類無きラブラブカップルです!
 ……だがその、温度差も半端ないのである。色々な意味で。
「クラウスさんは別次元の方ゆえ、色々とすれ違うことも多いといいますか」
「そう?」
 そうですとも。クラウスさんにはもっと度量の広い才女がお似合いなのだ。

「やはり、別れた方がいいかもって思うことも多いですね」

『まあ別れる気はないですけどー』と続けようとして。

 ガチャンと音がした。

『?』

 私とチェインさんが音の方向を振り向くと。

「え……」

 クラウスさんが真っ青な顔で立ち尽くしていた。

 足下には今しがた落ちたトレイ。
 そこからこぼれた三人分の紅茶とケーキが、床を汚していた。

/ 498ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp