第6章 悪夢の後日談
加害者の言い分(意訳)
『悪気はなかった。寝顔を見るだけのつもりだったが薬の副作用が心配で、添い寝をして様子を見ることにした。
するとこちらをぬいぐるみと勘違いしているのか、抱きついてきた。
嬉しくて喜ばせたくなった。特に拒否する様子は無かったし、”入れてない”から約束は守っていると思う』
被害者の言い分(要約)
『そんな言い訳が通るか、ボケがぁーっ!!』
…………
ライブラの面々は分かっている。
私が暗黒オーラを漂わせているときは、たいていボスが『やらかした』ときだと。
…………
さて、お昼前のライブラのオフィスにて。
私は作業デスクのPCで、データ作業にいそしむ。
畜生……ね、眠い……。
薬の副作用で、正直キツい。でもミスは厳禁だ。
頑張るしかない。
すると執務デスクから、チラチラとこちらをうかがっていた犯罪者が、
「カイナ……その……」
おずおずと声をかけてきた。
「何のご用でしょうか、ボス」
氷点下50度の声で返答した。
「!! そ、その……この書類のコピーを十枚……頼む」
「かしこまりました、ボス」
ガタッと音を立てて立ち上がり、カツカツと音を立ててデスクに向かう。
クラウスさんはちょっと怯えた顔であった。
「こちらですね。了解しました、ボス」
するとクラウスさんが、
「その……カイナ……私のことを、『ボス』と呼ぶのは……」
「…………」
「!!」
視線を向けただけでクラウスさんが固まる。
「了解いたしました。ミスタ・クラウス」
低く答え、コピー機の方へ向かった。
……クラウスさんがビビりすぎなように見えるかもしれないが、別に私が調子こいてるワケではない。
毒素治療の薬には、眠くなる成分が入ってる。
珈琲飲んどきゃいいだろう、と軽く考えていたのだが、予想以上の眠気だった。
何とか起きていようと必死なのだ。
結果、ものすごい形相になっている。
ちなみに今、ライブラの事務所には、他の面々もいる。
だが事務所は静寂に包まれている。
ものすごく居心地が悪そうに、ソファで出動待機してるのはザップさんとレオナルドさん。
何とか本のページに集中しようとするツェッドさん。
いつも通りに仕事をこなすのは、ギルベルトさんとスティーブンさんだけだった。