第6章 悪夢の後日談
敵が心変わりする前に自室に退避せねば。
クラウスさんも、あきらめてくれたようだ。
「カイナ。ではまた明日」
長いキスをされ、寂しそうにクマさんが離れる。
「はい、おやすみなさい、クラウスさん」
手を振って、そそくさと自室に退散した。
…………
そして自分の部屋に入った。
「はー……」
久しぶりのベッドにボフッと倒れ込む。
一人で過ごす夜! 何たる解放感!!
「あ、そうそう。薬飲まなきゃ」
グラスに水を注ぎ、処方された薬を飲む。
「先生、眠気が強くなるって言ってたっけ。明日も気をつけないと」
あくびをし、パジャマに着替え、いそいそとベッドの中へ。
ライトを消し、ゴロゴロして自分一人のベッドを堪能し、目を閉じる。
「…………」
ベッド、広すぎる。
むくっと起き上がり、
「ちょっと一緒に寝るくらいなら、いいかな」
何もあそこまで過剰に警戒することはなかった。クラウスさんには失礼だったかもしれない。
ちゃんと頼めば何もしないだろうし、二人で話し込んで気がついたら寝ていて……という夜も素敵だ。
「少し、一緒のベッドに入るくらい……何なら、向こうが寝てから自分のベッドに戻ればいいんだし。もしくは寝顔をちょっと見るだけでも」
と、ベッドから下りかけ。
「……いや、あかん」
クラウスさんは、こういうことに関しては安心の自制心の持ち主だ。
……と思われがちだが、天秤が自分の欲望にアッサリ傾く瞬間がある。
仕事中、普通にゲームをしてるのを見れば、それがよく分かるというものだ。
以前など、地下闘技場に乗り込み、大勢の観衆の前でノリノリで戦ったとか何とか。
「そだ。ベッドが広いのがいけないのだ」
私はスリッパをはき、スタスタとクローゼットに向かう。
「ええと、確かこの中に……あった!」
中から取りだしたのは、ドデカいクマさんのぬいぐるみだ。
以前、クラウスさんからのプレゼントにいただいたのだ。
リアル寄りのビジュアル。抱いたら安心のふんわり感。抱き枕にちょうど良い。
「三ヶ月はあなたがベッドのパートナーですよー」
いそいそとベッドに連れ込み、ぎゅうっと抱っこした。
「おやすみ……なさい……クラウス、さ……」
あくびをして目を閉じる。
眠りは迅速に訪れた。
…………