第6章 悪夢の後日談
確かにぶしつけな質問だった。
だが理由があって聞いているのだろう。
私は一瞬だけグッとつまり、
「……はい。ものすごく」
小さく、ボソッと答えた。
私の恋人クラウス・V・ラインヘルツ。
世界の均衡を守ることを己の使命としている、私の偉大なる婚約者だ。
文武両道、知勇兼備、不撓不屈の最強紳士。
正直、私にはもったいなさすぎる人だと思うのだが、何を気に入られたのか拝み倒される形で婚約した。
ただ結婚はしてないし、子作りもまだである。
そこまで急ぐ歳ではないし、元一般人の身として、今はライブラの戦闘員としての地位を固めたかったのだ。
……婚約者は大いに不満そうだったが。
それはさておき、奴は性欲が強い。
昼間の紳士面した物腰からは想像もつかないほど、夜は豹変する。
今までどうやって抑えてきたんだ。いや、今まで抑圧してきたものが、恋人というハケ口を見つけ爆発したとでも言うのか。
残業で疲れてても、つきあわされるのは日常茶飯事。
ライブラの事務所でヤラれたことも何度かある。
しかも表面上は私を気遣う姿勢を見せつつ、最終的には私が『拒まなかった』という詭弁を弄するのが腹立つ!!
あまりに好き勝手されるので、婚約破棄を宣言したことが過去に三度。
……毎日ケーキとバラの花束と手書きの謝罪文兼、恋文を贈られるのが重くて、つい許してしまうのだが。
それはさておき。
私の返答を聞き、ルシアナ女医は笑顔になった。
「じゃ、問題無いですね。すぐ治りますよ」
「本当ですか!?」
ホッとして肩の力が抜ける。ルシアナ先生は笑顔で、
「ええ。中出し百回くらいされれば、すぐ解けます」
沈黙。
「……はあ!?」
その後、先生によってしっかり説明がされた。
どうも敵の毒により子宮近くに毒素帯が出来、それが私の『気』を不安定にし、魔術の発動に障害を(以下略)。それを男性の陽の力で中和~という理屈が延々と続く。
「あ、残念だけど、この中和作業は子作りとは別口だから。治ったらまた頑張って下さいね~」
大きなお世話や。
そして私は、すみやかに手を挙げ、きっぱりと言った。
「先生、セックスしない方向がいいんですが、可能でしょうか!」