第5章 終局
「カイナ。パーティーを盛り上げようという気持ちは分かるが、皆、酒を飲んでいるし非戦闘員も混じっている」
いや、全然違うし。余興じゃないし。
ちなみにクラウスさん136号は、クラウスさんにパンチ何発かでノされ、呪符に戻されましたとさ。
「しかしオリジナルクラウスさんとの戦闘で、貴重な肉弾戦データが取れました。
今すぐAI魔術プロトコルの改良を加えた、クラウスさん137号の制作に……!」
「パーティー中だ、カイナ。それと私をオリジナルと呼ぶのは止めたまえ」
ジタバタする私を抑え、落ち着けるクラウスさん。
「でもあの子、どれだけAIを改良しても、なぜかクラウスさんを攻撃するんですよね」
肩口に頭をこすりつけながら言うと、クラウスさんは私の喉をくすぐる。ゴロゴロ。
クラウスさんはフッと笑い、
「私には理由が分かってきた」
「ええ?」
創造主の私よりも、あの子のことを分かるだと!?
「私の代替であれという願いをこめて作られた存在だ。
きっと現実の私を見て歯がゆく思ってしまうのだろうな。
そんなことでカイナを守れるのかと」
「……い、いや、代替までは」
焦りつつ、クラウスさんに下ろしてもらう。
私はクラウスさんから離れ、手すりに行き、霧に包まれた夜のヘルサレムズ・ロットを見下ろした。
オフィスビルに見える一角は、実は高度な幻術がかけられている。そこにはビルではなく私の家がある。
目をこらして幻術の向こうを見ると、暖かい光とガーデン、ライトアップされた美しいバラ園が見える。
……管理をお任せしてたからとはいえ、三年の間にほとんど植物園状態になってるなあ。
クラウスさんの私物も多数持ち込まれて、ほぼあの家に住んでる状態らしいし。
でもホッとする。放浪生活もいいけど、やっとホームに戻ってこれたんだって思う。
もう施しを受けるだけの小娘でも、自分の居場所が分からず死を待ってるだけのガキでもない。
私はやっと、ここに立っていられる。色んな人たちに支えられて。
この街が大好きだ。
ずっとここにいたい。
「カイナ。私と結婚してほしい」
声が聞こえた。後ろから。雑談の続きのように。