第5章 終局
「影響の本質は『闇避け』の方だな」
レオナルドさんの隣に、銀髪チンピラがどっかり座った。
行儀悪く足を組んで瓶酒を煽りながら、
「陰毛頭。このガキはな、エイブラムスさんから飛んできた呪いを弾き返してるんだぜ?」
「ええ!?」
うーむ。エイブラムス先生は、お仕事柄、色んな方面から呪いを受けている。だが、持ち前の豪運で避けているらしい。
……というか、後輩になんてあだ名つけてるんだ、ザップさん。
「『呪い』とか、そういうのが見える人に言わせると、あの人とカイナっち、ピンポン状態で延々と『呪い』をラリーをし続けてたらしいわね」
私の隣に座りながら、K・Kさんが仰る。
「世界一嫌なラリーっすね……」
身体を震わせるレオナルドさん。い、いや、私には一切自覚がないんですが!
「でもラリーし続けてるうちに、段々と呪いが小さくなっていくらしいのよ。
ものすごぉーく、ゆっくりなんだけどね」
「こいつの性格もあるんすかね、姐さん」
ザップさんが少し笑った。
しつこいくらい繰り返すが、私には自覚はないし私自身に幸運な影響はほとんど無い。
でも周りをほんの少し幸せにしたり、呪いを軽減出来たりというのは、すごく嬉しいことだ。
自分が存在して良かったと思える。
しかし神性存在というと、ここでは『いかがわしい』という風にとらえられてる。
けど私が関わった存在は、何だかんだで黙って来て黙って去って行った。ほんの少しの暖かい風を残し。
もちろん意思の疎通など出来ようはずもない。
だが、あれは本当に『概念』『現象』なんだろうか。
あまりにも儚い私のみじめな訴えに、足を止めてくれた。
私はチラッと懐を見る。質量調整で、外からは『ある』と気づかれないが、そこにはいつでも聖書がある。
出現だけで世界が終わる存在。終末のラッパ。
もしかして、あの神性存在って――。
…………。
まあ、一生分からないことだろう。多分、それでいいんだ。
「こいつが受けてきたことを思えば、全然埋め合わせがつかねえけどな」
ザップさんが吐き捨てる。
K・Kさんも私の肩に手を回し抱き寄せた。
多少は事情をご存じなのか、レオナルドさんまでが笑顔を曇らせた。
うわ、空気がちょっと重くなったあ!