第5章 終局
「え……ええと、そ、そうなんですか……、た、確かに、似てますね……」
「でしょう? 海外に行ったときはクラウスさんがいないから、あまりにも寂しくて、毎日クマ型の人形を作ってひたすら話しかけてましてね。そのうちに良いことを考えたんですよ……そうだ。このクマさんを動かせばいいんだって……このクマさんが……クラウスさんの代わりになってくれれば……クラウスさんがいなくても……私、ずーっと一人じゃない……クラウスさんがいなくても大丈夫……」
「ええと……その、あの……」
なぜか冷や汗を流し、怯えた表情になってるツェッドさん。
「私のいない間も私を想ってくれる。君の一途な心を嬉しく思う」
心に光が差した。
クラウスさんが、私の肩に手を置いていた。
「だが君はゴーレムを存在させるだけでも魔力を消費している。そろそろ呪符に戻してはどうかね」
私の頭を撫でるクラウスさん。私はハッと我に返った。
「そうですね……」
136号を呪符に戻すと、
「ありがとうございます。初代クラウスさん」
「うむ。私は初代ではなく、ナンバリング不要な君の婚約者だ。君は長旅と戦闘で精神が摩耗している。さ、ギルベルトにも会いたいだろう。行こう。そしてゆっくり休みたまえ」
クラウスさんにおててを引かれ、私は連れて行かれる。
「何すか、あの子! 色々怖い! そして婚約者を初代呼ばわり!?」
「目がすわっているというか……凄まじい闇のオーラを感じました……」
レオナルドさんとツェッドさんが何か言ってるのが聞こえた。
「あいつ、元々旦那が何から何まで面倒見てたガキでよ。
旦那絡みで色々あって一度ぶっ壊れてから、まーだ完治してねえんだよ」
「水系魔術の天才的な素質があったんだけどね。クラウス恋しさからゴーレム制作に行っちゃって、今じゃ完全にそっち専門だよ」
「本部の方は、まだ水系魔術の才能を伸ばしたそうだったけど、ミスタークラウスが彼女の状態を聞いてから、再三、赴任要請送ってたの。
あの子、ミスタークラウスが側にいれば、どうにか普通に日常生活を送れるし」
ザップさんとスティーブンさんとチェインさんが、小声で何かを言ってるが、よく聞こえなかった。