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【血界戦線】紳士と紅茶を

第5章 終局



 てか、ちょうどトップ二人が並んでるな。前後が逆になったけど、まあいいや。
 私は背筋を伸ばし、クラウスさんとスティーブンさんにビシッと敬礼した。

「牙狩り本部より辞令を受け、本日よりライブラに正式赴任となりました!
 術士カイナ・シノミヤと申します! どうぞよろしくお願いいたします!」

 クラウスさんは重々しくうなずき、私の右手を取る。

「新しい同志を歓迎しよう。こちらこそよろしく頼む。ミス・カイナ・シノミヤ」

「はい!」

「期待の新人だな。もう三年前とは違い、即戦力だ。使わせてもらうよ」
 うう。スティーブンさん、目が怖ぇ。

「お、お手柔らかに……」
 愛想笑いをしていると、後ろからヒソヒソ声が聞こえた。

「全然まともじゃないっすか。ザップさんたちの話と違わないですか?」
「いや表面だけなんだ。見てろ。もうすぐボロが出るから」

 ……久しぶりだというのに、あいさつの『あ』の字もないクソ銀髪の声がする。
 というか、どういう噂をレオナルドさんに吹き込んだ。

 ちなみにチェインさんは私に片手だけ上げ、フッと宙にかき消えた。
 相変わらずドライですな。まあそういうのは表だけの方と知ってるけども。

「ん?」
 
 私の背後からうなり声がする。
 体高二メートルほどあるクマ型ゴーレム『136号』だ。
 今は私の背後に控えているが、鼻面にしわを寄せ――クラウスさんにうなっている。
 というか、さっきからずーっとうなってる。

 するとクラウスさんはコホンと咳払いし、一歩前へ。

「君も久しぶりだ。私に代わりカイナを守ってくれて、ご苦労だった」

 最後まで言う前に136号が咆吼。二本足で立ち上がると、四メートルを越す。
「こ、こら!!」
 主人の私が制止するが、クラウスさんに殺意の一撃を――。

「っ!!」

 ……マジか。

 クラウスさん。クマゴーレムの全力の殴打を片手でつかんで止めると、そのまま背負い投げの要領で、136号をひっくり返してしまった!
 地面がもろに揺れ動き、レオナルドさんがバランスを失って転倒、盛大に転がった。


 しばらく会わないうちに、さらに化け物じみ……コホン、強くなったなあ、クラウスさん。


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