第5章 終局
「皆さん、親蜂の対処に精一杯で、巣や子蜂までは――うわ!」
熊ゴーレムこと136号が急旋回し、高速で飛んできた子蜂を次々にかわす。
くそ! この子、私より頭がいいんだよな!
「敵に気づかれた!……うわあぁ!!」
揺れる揺れる。完全にコースを外したジェットコースターである。
レオナルドさんも、もはや気にせずに私につかまり、落ちないよう必死。でも、
「右方向から四匹来ます!!」
目を見開いて言った。鮮やかな水色の瞳には幾何学文様が浮かんでいる。
なるほど。全てを見抜く『神々の義眼』というのは本物か。
この方だけは絶対に守らねば。
「よし!」
私は懐から、東洋の文字の書かれた呪符を取り出した。
古めかしい呪符に見えるのは見た目だけ。
表記文字は一種のアクセスコードで、それらは私の管理結界につながっている。
私は呪符を上空に投げた。
「十二符『蛟(みずち)』!! 二十五符『祇狐(ぎこ)』!!」
宙に放った呪符が、空中で巨大な蛇と、白狐に変わる。
彼らは鞭のような弧の軌跡を描き、逃げ回る蜂どもにあっという間に追いつくと、次々に粉砕していく。
だが私も未熟。三頭同時に操ると頭がズキズキしてくる。
制御に苦戦してると、レオナルドさんが叫ぶ。
「カイナさん、もう次が!」
いや無理。捕捉しきれん。
「レオナルドさん、子蜂の位置のご指示を! あなたの言った方向に私のゴーレムを攻撃させますから!」
「分かりました!!」
「136号! 親蜂の真上へ!! 上空から巣を破壊する!!」
頼もしいクマさんが咆吼し、速度を増して一気に駆け出す。
「西南西方角から二体!――真っ正面から十体!」
うわ、ダメだ。こっちの目的に気づかれた。
ゴーレム三体じゃとても無理。てか、目の前におっかない蜂の顔がー!!
「散弾式連突(シュロートフィッシャー)!!」
今にも私を刺そうとしてた子蜂が地上から放たれた小十字架に串刺しにされ、落ちていく。
だが下を見ているヒマはない。次の呪符を取り出した。
「八符『夫諸(ふしょ)』!!」
現れ出でた四本角の白鹿。
天に向かっていななくと、空中に巨大な洪水を引き起こし、子蜂をあっという間に流し去る。
ゴーレムたちが道を作り、その中心を、迅雷のごとく巨大な熊が駆けていった。