第5章 終局
「そういえば戦闘中に転送させられたんですよね。行き先はライブラの方角で大丈夫ですか?」
「あ、うん。そっちでお願いします。まだ戦ってる最中だと思います。思ったよりクラウスさんが手こずってて――」
「!!」
それを聞くなり、私は136号のスピードを上げる。
落ちそうになったレオナルドさんが大慌てで私に捕まり『す、すみません!』と慌てて離れた。
別にいいのに。
「了解しました。戦況を見て近くのビル陰で、一旦地上に降りましょう。
136号は地上では四足走行になりますから、振動に注意して下さい」
「…………」
「どうしました?」
レオナルドさんを振り返る。
「え? いや、その、結構、普通の人だなと思って」
「?」
「あ! すみません、そう言う意味じゃないんです!」
どういう意味っすか。
「その、皆、あなたについてバラバラなことを言うから、僕もツェッドさんもあなたのキャラをつかみかねてて」
ほほう。
「クラウスさん、あなたのことを天使か聖女みたいに話すし。あとハリネズミっぽいって」
待て。そのラストの例えは何すか、クラウスさん。
「けどスティーブンさんやザップさんたちは逆に――」
レオナルドさんは、言いかけて言葉を止める。
「『逆に』……何ですか?」
「ええと……」
糸目は、笑顔のまま凍りついている。
沈黙する私たちの間に、風が吹き付ける。
あ、136号がちょっと耳を動かしてる。進行方向からの爆音を拾ったらしい。
ならまだ戦闘中か。術式を準備しとかないと。
「で、レオナルドさん。彼らは私のことを何と?」
無感情な声で、静かに聞く。
「…………お、お、面白い子だって」
明らかに無難な答えを考えてたな。
「あ! あそこです!」
見えてきた。遠目でクラウスさんたちの姿までは確認出来ないけど、何やら巨大な蜂っぽいのがいるな。
山のように巨大な蜂が、ギリギリ地上近くを飛翔してる。
敵は背中に背負った蜂の巣から、大量の子蜂を飛ばしてた。
その子蜂が広範囲に飛んで、通行人に取り憑いては咀嚼(そしゃく)したり、寄生して卵を産ませたりしてる。グロ!
一瞬だけ目に入った氷柱、炎の刃、血の十字架に一瞬、泣きそうになるが、それどころじゃない。
「これじゃ、地上に降りるどころじゃなさそうですね」