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【血界戦線】紳士と紅茶を

第5章 終局



 長々と話したが、それがつまり、彼女が消えた理由だ。

 全てが終わっても、君は罪悪感からカイナになおのこと優しくした。
 一方、彼女は君への依存から脱却出来ずに、君の顔色をうかがう傾向が強くなった。

 そういうことだ。自立したいんだろ。

 別に君を嫌ってるわけでも、結婚が嫌なわけでもないと思うね。
 ただ今の君の態度は、愛情なのか同情なのか区別がつかない。

 君が結婚を急ぐのが、贖罪(しょくざい)行為に見えてしまってるのかもな。

 あるいは、あの子はもう少し世界を見たいんじゃないか?
 学業の途中で連れてこられたんだ。その記憶も消したことで基礎学力は恐らく低下している。
 もう一度学び直したいだろうし、もしかすると進学もしたいかもしれない。

 まあ、ここらへんは僕の野暮な推測だ。

 あとは君が彼女から聞くといい。

 お互いに何を隠して、何を望んでいるのか。

 きちんと話し合え。婚約者なんだろう?

 カイナの居場所?
 まあ上手く隠れてはいる。
 聞いた話だと海外への渡航費を貯めるため、一人暮らしをしてアルバイト生活中らしい。
 このヘルサレムズ・ロットで危険極まりないが、魔術でカバーしてどうにかやってるそうだ。
 だが、こちらが尻尾をつかもうとすると水のように、どこかに消えてしまう。

 でも君のことは気になるようだな。
 最近の緊急召集案件の後始末で、彼女の術式の痕跡が複数見つかってるよ。
 
 かといって、いつも彼女が君を優先してくれると思うな。

 考えをガラッと変えろ。春は近いが風はまだ寒い。
 彼女は例の暖房器具を探しているそうだ。
 だが探しても探しても、誰かに買い占められたのか見つからない。

 そんなとき、ある店でコタツの特売セールをやってると知ったら?
(コタツ代と店側に払う羽目になった金額は、あとで君に全額請求させてもらう)

 君一人なら逃げられるかもしれないな。
 だがザップやチェインが回り込めば? 
 出入り口でギルベルトさんが張っていれば?

 皆で囲んで追い込め。
 
 あとは君自身が説得して、何としてでも連れてこい。

 パーティーの開始は19時00分きっかりだ。
 一分一秒でも遅れたら、ケーキとスペシャルワインと特製ローストビーフはお預けだと思え。


 幸運を祈る。


 君の友人より
 
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