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【血界戦線】紳士と紅茶を

第1章 出逢い



 銀髪の兄ちゃんは完全にイライラモードになってる。
 謎の赤いカタナで次々に触手をぶち切るが、どれだけ必死に私に手を伸ばしても、あともう少しで届かない。
「くそっ!!」
 触手は兄ちゃんを攻撃しようと目まぐるしく動き、私は空にビルに地面にと激突しかけては宙に戻され、脳しんとうってか気絶寸前だ。
「でも駄目なんです。これ、大事な人からもらった本だから……」
 ギュッと大きな聖書を胸に抱える。

「アホか!! そんなもん、旦那におねだりすりゃ十冊でも二十冊でも買ってもらえんだろっ!!
 いいからこっち来いっ!! てめぇを助けられなきゃ、俺が旦那に殺されんだよっ!!」

 よく分からないけど――。
「嫌です」
「こっの馬鹿女っ!!――っ! しまった……!」
 知らん人にそこまで罵倒される筋合いはありませんがな!
 さすがに言い返してやろうと思ったけど、その前に私をつかんでる触手が、ものすごい勢いで動き出した。ジェットコースターの何倍のGだ。肋骨砕けそう。

「ミス・シノミヤっ!!」

 叫び声が私を正気に戻す。
 あれ? クラウスさん。こんなとこにいると危ないのに。
 あの十字のナックル、いつかどこかで見たような……。
「ザップ! 何をやってるんだ!」
 怒鳴ったのはクラウスさんの隣。見たことのないスーツの人だ。
「うるせえな! そいつが旦那にもらった本を、何がなんでも放さねえんだよっ!!」
 こちらの跡を追うように、さっきの銀髪男が触手を切りまくりながら跳んでくる。

 私をつかむ触手の目的は一つ。むろん私をとっとと食って栄養に変換することだ。
 けど、クラウスさんが殴ったり、銀髪野郎が触手をぶった切ったり、あとスーツの人が謎の氷で触手を凍らせたり、三人が総攻撃してるから上手くいかない。
 
「くそ。他のメンバーが出ているときに……。
 クラウス! 彼女を早く退避させないと、攻撃が出来ないっ!」

 スーツの人が怒鳴ってる。
 どうも必殺技みたいなのを仕掛けたいけど、私がいるせいでぶっ放せない感じみたい。

「ザップもだ! 遊んでいないで一刻も早く彼女を脱出させろ!!」
「うるっせえな! 狙いが定まらねえ――だから本を捨てて手ぇ伸ばせ、馬鹿女っ!!」


 私は首を振る。完璧な足手まといと化していることくらいは自覚していたが、それでも手放したくなかった。

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