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【血界戦線】紳士と紅茶を

第5章 終局



「カイナ。少し眠りたまえ。見張りは私が」
「……はい」

 目を閉じるけど、いつまで経っても眠れない。
 クラウスさんも気づいたのか、

「なら話をしよう。何か楽しい話を」
 そう言われたので、私は口を開いた。

「……こんなことしたって、意味ないのに。絶対無理ですよ」

 ……あ。あああああ!! ポロッと口から出てしまった!!
 守られてばっかの挙げ句、助けてくれた相手に愚痴るという、最低行動をっ!!
 けどクラウスさんは気を悪くした様子はない。

「無理なことなど何もない。君に過酷な生活を強いた私の責任でもある。だが状況は必ず好転する。どうか気を落とさずに――」

「私はもうあきらめてます。覚悟だって出来てます。
 今の私には、あなたが塵一つ残さず消えるのが一番怖い。だから――」

 ヤバい。何も戦ってない奴が愚痴とか! ぼやきとか! あきらめようとか!

「もう十分だから、終わりにしましょうよ」

 立場が逆だったら超カチンとくるわ! 守る気無くして帰りたくなるわっ!!
 猛烈な自己嫌悪に、壁に頭を叩きつけたい衝動にかられた。

 さすがに何かしら苦言を呈されるだろうと思った。
 けれど。

「君は一片たりとも、あきらめてはいない」

「……あきらめましたよ。それにクラウスさんだって、一度はあきらめたでしょう?
 私を封印しかけたじゃないですか」

 …………。

 私が目覚める直前のときのことを、覚えておいでだろうか。

 魔導組織から救出された私は、拷問や実験を受け、挙げ句に相手の一方的な都合で宇宙の外に飛ばされかけた。

 傷は深く、私は全てを拒絶するに至った。

 何日もベッドに横になって一切動かず、魔術を使ってか点滴すら受け入れない有様だった。

 その一方で、新たなデータや証言から、私の正体が発覚した。
 私は、現れた途端に宇宙を滅ぼすような神性存在――それを呼び出す『生きた召還門』になりかけてると。

 人類が取れる選択は『神性存在の術式解除』か『カイナの完全封印』の二択。
 でも前者は神の難問を解くがごとくの難作業。


 ……ライブラの皆でさえ、私を助ける可能性を放棄した。

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