第5章 終局
「起きたまえ、カイナ。朝食にしよう」
クラウスさんに抱き上げられ、寝ぼけ眼で肩に上がる。
「サーモンサンド」
「作ってあげたいのは山々だが、材料が無い。我慢してくれたまえ」
私をなでなでしながらキッチンに向かうクラウスさん。
「サーモンソテー……」
クラウスさんのもみあげを引っ張りながら懇願する。
「残念ながら料理を変えても、材料不足には変わりない。
気の利かない私を許してくれたまえ。ツナメルトサンドなら作れるだろう」
「きゅう~」
もみあげを引っ張る強度を強め、クラウスさんの笑い声を聞いたのだった。
「あ、美味しそう! あれでもいいかも――」
窓辺の青い葉っぱを見つけ、私の目が光る。
「!!」
クラウスさん、途端に顔を青くし、窓辺の鉢植えを見る。
「……植物に罪は無いが、早急に処分しなくてはならないな」
と、哀しそうに言ったのであった。
…………
食事が終わり一緒にお皿を洗った後、手伝っていただきながら、歩く練習をした。
しかし一向に上手く出来ない。
何度も転びそうになり、そのたびにクラウスさんに支えていただいた。
疲労した私を、一度ソファに座らせ、クラウスさんは私の足首の包帯を一度外し、よく調べた。
「ここを押して痛みは?」
「いいえ」
「目を閉じて。私がどこを触っているか分かるかね?」
「……足の甲、ですよね?」
「ふむ」
「どこも痛くはないんですが、ただ思ったように動かないというか……」
鈍い違和感はあるものの、昨日はそこまで意識するほどではなかった。
「昨晩も思ったが、やはり予想以上に回復が遅い。
断定は出来ないが、神経が傷ついている可能性がある」
……営みの最中にそこまで見てたのか。すっごく恥ずかしいんですが。
私の表情に気づいたのか、クラウスさんはゴホンと咳払い。
「この件が終わったら、一度検査入院した方がいいだろう。
君の師を見つけるのはその後になるだろうか」
…………。
「『師』って?」
「君の魔術の師匠だ。ヘルサレムズ・ロットに居ながら学べる方が理想ではある。
すでに何人か候補を見つけているし、私の師に連絡し、より素晴らしい方を紹介していただくことも出来るだろう」
さすがに今は連絡することは出来ないが、とフッと笑う。