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【血界戦線】紳士と紅茶を

第1章 出逢い



 敷地の入り口側に……二階建てサイズの巨大イカがズルッと身体を引きずり入ってくる。

 大丈夫。大丈夫! みみみみ見つからない、見つからないっ!!
 聖書を胸にガタガタ震え、私は身体を縮めた。


 …………

 …………

「すっごいなあ。街の灯がきれい……」
 うわあ。霧のキノコ雲が超近い~。ここで自撮りしたら、超何とか映えしそう☆
「いや死ぬな。どう考えても数分以内にまた死ぬな」
 わたくし、巨大イカの触手に身体をガッシリつかまれてます。
 けど心配なのは、胸に抱えた聖書が汚れないかということ。
 眼下からは終わりの無い悲鳴。
 後、四方からは爆撃だったり魔法攻撃だったりされてる。
 まあイカには全く効いてないようだけど。

 どういう状況かというと、私は教会に侵入した巨大イカに捕らえられてる。

 幸い、まだ食われていない。
 このイカは教会の敷地に鎮座しつつ、他の個体を吸収しながらどんどんデカくなっている。
 イカと言うけど今や触手は百本を軽く超え、届く範囲の人や異界人、あと同じ巨大イカをフードプロセッサーするのに忙しい。
 私は犠牲の順番待ちをしつつ、のんびりとヘルサレムズ・ロットの夜景を楽しんでいた。
 うわっ!! 頭上を魔法攻撃がかすめたっ!!
「危ないなあ、もう」
 聖書のホコリをはらいながら、ブツブツ言う。

 一応、イカを倒そうという勢力もいるらしいけど、倍に倍に強化されている相手には、なかなか攻撃が通じないらしい。
 上から見る限り、他に活動してる巨大イカはいない。
 つまりこのイカは一番強い最終形態バージョン。
 もう核でも落とさない限り、無理じゃね?
 
「わっ!!」
 私は一気に急降下する。どうやら捕食の順番が来たらしい。
 うう、ついにフードプロセッサーされる!!
 即死しろ、即死しろ、即死しろ、と願いながらギュッと聖書を抱きしめた。
 震えながら目を開けると、眼下に血と肉片と半分溶けた肉塊でびっしりの牙がガチガチしてるっ!!
 既視感あるけど、今度は確実に死ぬ!!

 かくて私はフードプロセッサーに放り込まれる食材になろうと――。

「斗流血法――」

 ん? 誰かなんか言った? ひきつぼしりゅうけっぽう?

「刃身ノ壱・焔丸っ!!」

 凄まじい紅の刃が、閃光とともにイカに叩き込まれた。
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