第1章 出逢い
ヘルサレムズ・ロットを揺るがすような凄まじい地響きと轟音がし、飛び起きた。
「な、何!?」
祭壇の下から出て霧の夜空を見上げると、メテオのように禍々しい光が、次々に街に降り注いでいるところだった。
降った先からは大爆発と悲鳴が聞こえる。
テロとか生優しいもんじゃなく、完全に戦争クラスの災害だ。
こんなことが出来るのは――。
『ははははははっ!! 諸君! 楽しい夜を過ごしているかね!?
堕落王フェムトさ!! 全く君たちときたら、豚のように怠惰で――』
ま た お ま え か 。
私みたいなのにまで、そう思われてしまう男が、街のスクリーンに映し出されていた。
以下、堕落王フェムトの言動を要約すると、
→『化け物の卵を街に落としまくったよ☆』
→『孵化した怪物は動く物を見境なしに捕食するよ☆』
→『近くの同族と合体して、倍に成長&強化されるよ☆』
→『生き残りたければ退治して自ら動くことの尊さを(以下略』
……みたいな内容だった。
ヤバい。バタバタと皆逃げてる。車が人を平気で跳ね、避難を急ぐ。どどどどうしよう!
私は聖書を抱きしめ、祭壇の下に引っ込み、ガクブルする。
「!!」
すごい地響きがして、身体ごと跳ね上がり、祭壇にごちんと頭をぶつける。いたた。
頭上でヘリが旋回する音がした。祭壇の下から怖々顔を出すと、警察だか行政だかのヘリが飛び回り『各自自力で脱出&避難しなさーい!!』、みたいなことを叫びまくってる。
あ、一機、怪物っぽいのに打ち落とされ、丸ごと食われてる。ざまぁ。
融合が進行してるのか、遠目に怪物が見えた。
巨大なイカっぽい生物だ。
ただし丸い口に牙びっしり。触手に巻き付いた人を片っ端から口に放り込み、フードプロセッサーしてる模様。
教会の外は、やはり逃げる人々で大混乱。
に、逃げるべき?でも逃げた先が安全とは限らないし。
それに『どんどんくっついて、最終的にめっちゃ強い一体だけになる』なら、それだけ回避すればいいんだし。
そうだ。やっぱ隠れてよう。そうしよう。
安全な祭壇の下に亀のごとく頭を引っ込め、聖書を抱きしめ眠りにつこうと――。
「あ」
結界が盛大に砕ける音がした。