第5章 終局
「ならば身体的な方かね? 先月の身体測定結果では身長201cm、体重13×kg、流派はブレングリード流血闘術――」
「いえ、もういいです……」
これ以上聞き出すのは怖いので、やめておいた。
「でも契約式の解除も頑張りますね。じゃ、とりあえず運動も兼ねて歩行訓練を――」
「カイナ。質問の意図を聞いて良いだろうか?」
「却下。唐突にぶしつけかつ不快な質問をしたことを深く反省、謝罪いたします。
じゃ、私、ちょっと伝い歩きしてますんで、クラウスさんはご自分のご用事をされて――」
「却下することを却下したい。不快には思わない。
それよりも先ほどの質問の意図の回答を!」
立とうとしたら、手をつかまれた。
フワッと身体が浮いたかと思うと、そのままスッとクラウスさんのお膝の上にのせられる。
「却下することを却下することを却下いたします」
「断る」
ちょ……! そこはそういう返しじゃないでしょう!?
「教えてくれたまえ。なぜ私の個人情報を突然知りたがったのだ」
眼鏡の奥のクラウスさんの目が光ってる――気がした。
「意味はございません。ふとした好奇心で!」
紳士の腕を押して逃げようとするが、あの優しい腕が、こんなときに限ってビクともしない。
「それにクラウスさん、今、マジメな話をしていたんじゃないんですか!?」
「話はすでに終了している。君の心身の回復を最優先にと」
「なら今すぐ下ろして下さい!!」
「聞いてきたのは君だ」
「クラウスさん、ご用事とかいいんですか!?」
さっきより力をこめて暴れるも、
「君を一人残して外に出ることはない。それよりも急に私個人に関心を抱いた理由を話したまえ」
「そら関心は持ちますよ! 私のためにたくさんして下さった方で、なのにちゃんと思い出せないんですから!!」
「君の気遣いに感謝する。だが今、突然、私個人に関心を抱いた理由は!?」
絡むな、絡むなっ!! さっきの泰然自若としたあなたはどこにいった!?
「もしや、私のさっきの言動を肯定的に考えてくれたのだろうか?」
ついに核心に触れてきやがった!!
クラウスさんの心音が異常に速い、体温が高い。
「答えてくれたまえ、ミス・カイナ・シノミヤ!」
膝に乗せられ抱きしめられる。
背骨が折れそうなんですが……。