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【血界戦線】紳士と紅茶を

第1章 出逢い



「いったい、どこから手をつけたもんだか」
 デカいガレキにもたれ、やはりため息。
 まずは『組織』本部への連絡か。でも通信機器もガレキの下だし、スマホなんて便利なもの、『組織』が私ごときに支給するはずがない。
 なら無事な物品の保護? 仮住まいの建設? ガレキの撤去? 教会の再建?
 いやあ、それより何より防犯設備の設置か?
 確か、教会を守る結界があったはずなんだけど、多分ガレキでメチャクチャに破壊されてる。
 この機に乗じて盗人や地上げ屋に来られても困るなあ。
 やはり電気柵くらいは設置すべきか。
 いや、そんな金も設備ねーよ!と一人突っ込み。

 まあ、どんなに警戒したって、どうにもならないときはならないもんね。
 というか疲れた。『組織』の連中がいなくなればいいと、あんなに思っていたのに、いざ居なくなると気が抜けて何もする気がなくなる。

 じゃ、最初から何もしなくていいかなー。
 だが最低限、人が住める状態にはしたいけど。
 でもガレキの撤去とか面倒くさいなー。
 私はボーッと、崩れかけた教会と、壁の崩れた箇所から見える十字架を見上げた。

『組織』の奴らが私を伴い、この街(ヘルサレムズ・ロット)の教会に来て三ヶ月。
 異界と現世が交わるこの都市の洗礼を受け、三ヶ月で全員が死んだ。
 肩がぶつかったというだけの理由で蜂の巣にされたり、突然出現した次元の扉に吸い込まれ、死体すら残らなかったり。
 脳みそを一部切り取られネズミレベルの知能指数になったり、内臓に寄生されて化け物産んで発狂したりした奴は、仲間が銃弾叩き込んでやっと楽になった。
 それから皆はなるべく集団で行動するか、危険そうな場所には私を先に行かせるようになった。
 それ以外に用事が無ければ教会に引きこもっていた。
 
 なのに、ついさっき。最後の六人全員が降ってきた巨大ガレキにつぶされ死んだ。
 金を持って我先にと避難しようとして、私のことは完全放置だった。
 おかげで私だけは巻き込まれずに済んだが。
 私は一人である。

 で、これからどうしたものか。

 思考が振り出しに戻り、私は結局何もしないまま、ボーッと空を見上げる。

 そのままだったら、誰かが私を『完全に』殺すか連れて行くかするまで、永久に私は放心していたのかもしれない。
 けど。
 
「ん?」
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