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【血界戦線】紳士と紅茶を

第1章 出逢い


■Sideライブラ

 ヘルサレムズ・ロットの、とある日のことだった。

 堕落王フェムトが、またも傍迷惑な発明をし、彼の手による巨大生物が街を大暴れした。
 超人秘密結社ライブラの精鋭班も出動し、迅速に事態の収拾にあたった。

 そして全ては終わったが、敵の最後のあがきによる大爆発で、その区画一帯に巨大ガレキが降り注いだ。
 緊急に皆を救援しなければならない。
 が、そこはこの街――ヘルサレムズ・ロットだ。
 ほとんど体を為していない行政機関は『被害者は各自自力で脱出し、自分で救援要請のこと』という血も涙も無い通達を出し、被害の全貌把握すら放棄する始末だった。

『外』の世界ではありえない無政府状態。だがそれが、この街の日常だった。
 
 だが彼――クラウス・V(フォン)・ラインヘルツはその事態に歯がみする数少ない一人だった。

 己の手で一人でも多くを救出したい。
 そう言ったが頬に傷持つ友人は笑顔で――だがきっぱりと言った。

『君は戦闘で体力を消耗している。先に本部に戻って待機していてくれ』

 頼む――と言った彼の目には懇願の色があった。
 そこで忸怩(じくじ)たる思いのまま、執事の待つ車に戻った。
 車が発進する。クラウスは崩壊した街並みを無念の思いで見た。
 だが人々は、存外平気な顔で、ガレキの下から這い出ている。
 ヘルサレムズ・ロットの住人たちのたくましさに、一抹の安堵を抱きながら、クラウスは休憩すべく目を閉じようとした。

 そのとき。

「!!」

 ほんの一瞬、彼の目があるものを捕らえた。

「停めてくれ、ギルベルト!!」

 気がつくと叫んでいた。
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