第5章 終局
どうもここは、ファミレスみたいな場所らしい。
席に戻ると、大きな人は手早くタッチパネルを操作し、注文をしていった。
「食べたいものはあるかね?」
「あなたと同じ物を」
「承知した。では特盛りレバーを六人前――」
「ホットケーキプレートっ!! ドリンクはオレンジでっ!!」
力強く叫び、ハーッと息を吐く。
そこでハッとした。
「あなたはどなたで、ここはどこでしょう?」
少しだけ沈黙があった。
「私はクラウス・V・ラインヘルツ。ここは××地区××番通りのチェーンレストランだ」
「ふむ」
「他に質問は?」
「わたくし、あなたに誘拐されたのでしょうか?」
クラウスさん、顔が怖いし。
するとククッと笑う声。
「私が君をさらったのかね? 君のあまりの愛らしさに?」
「ええ。ありうべからざる話ではございませんでしょう」
「その通りだとも。君は実に愛らしい!」
「なるほど」
「うむ。その通りだ」
私もクラウスさんも満足そうにうなずいた。
…………。
何だろう。この会話不全感。ツッコミが……ツッコミがないっ!!
ボケを正面から受け止められた! これじゃあバカップルの会話、もしくは私がタダの痛い奴じゃないか!!
ガクゼンとしたが、すぐに捕捉が来た。
「私たちは事情があって、先ほどライブラという場所を出てきた。
今は新しく寝泊まりする場所を探していて、その途中に遅い夕食を取っているところだ」
「はあ」
まずライブラというのが良く分からん。『事情』って何なんだ。
私はクラウスさんという方をじっと見る。
恐ろしい人相と長身、あと眼鏡。
今はパリッとした白いワイシャツを着てネクタイ等はしていない。あとは大きな旅行カバンを持っているだけ。
でもホームレスという感じは全くせず、育ちの良い雰囲気がにじみ出ている。
何者なんだろう。分からない。
でも向こうは私を知っているみたいだし、ついていくしか無いか。
そうしている間に、ホットケーキが運ばれてきた。