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【血界戦線】紳士と紅茶を

第5章 終局



 …………。

「……あれ?」

 ハッと意識が戻る。

「……あ、あれ???」

 ここ、どこだろう。何で私、こんなところにいるの?
 半分パニックになりながら、顔を上げる。

「え?」

 目の前に鏡があった。トイレの鏡らしい。
 つまり私はトイレの鏡の前に立っている!
 鏡は汚れ、ひび割れていたが、そこに映っているのは可憐な美少女――ではなく、見慣れた私である。

 だけどなぜか、髪が真っ白だった。

 それと顔のやつれっぷりもハンパない。
 顔のあちこちに傷跡。いや、身体にも傷がある。動くと少し痛い。
 
 だが私の髪の色や傷はこの際、さておこう。
 それで私は何でトイレにいるんだっけ。
 そりゃあもちろんトイレに来たからだ。
 で、この後することは――?

「カイナ」

 聞き慣れた声がした。トイレの入り口からだ。
 カイナとは誰だろう?
「もしかして私のことでしょうか?」
 すると、少し沈黙があり、

「そうだ。君はカイナ・シノミヤだ。申し訳ないが、開けて構わないかね?」
「はあ」
 あいまいに返事をすると、ガチャッと音がして、ドアが開いた。

 そして――ゴンっ!と音がする。

「わっ!!」
 びっくりした。入り口からデカい人がトイレに入って――こようとしたんだけど、長身なので頭をもろに上部分にぶつけたのだ。

「だ、大丈夫ですか?」
「ああ、すまない。見苦しいところを見せた。問題はない」
 その人は額をさすり、ちょっと恥ずかしそうに言った。
 誰だろうか。顔はおっかないが、私を見る目はとても優しい。

「さあ、席に戻ろう」
「!」
 彼は私を肩に担ぎ上げ、トイレから出る。やだなあ。子供みたいだ。
「あの、私、歩きますですよ?」
「そうかね?」
 大きな人が、私を下ろしてくれる。なので歩こうと――あ、あれ?
 足が思うように動かない。頭が命じてもその通りに動いてくれない。
 いや動くには動くが、ものすごくヨロヨロする。
 ずーっと正座した後、足が上手く動かせないでしょ。ちょうどあんな感じ。

「っ!!」
 つんのめって転びそうになったのを、大きな人がサッと手を出して支えてくれた。
「君を連れて行ってかまわないだろうか?」
「了解いたしました」

 重々しくうなずき、私は再び抱えられ運ばれていった。

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