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【血界戦線】紳士と紅茶を

第5章 終局



 そこにガラガラと音がした。
 執事のような服のご老人が、点滴スタンドと点滴を持って来たのだ。

「カイナさん。腕を失礼いたします」

 手早く私のパジャマの袖をまくって腕を出させ、手早く消毒。
「水分とブドウ糖の補給をさせていただきます」
 痛い痛い。でもすぐ点滴がされ、ポタポタと輸液が管の中を流れる。
「手先のしびれや痛みは?」
「大丈夫です。どもでした」
「また会話をすることが出来て、とても嬉しく思いますよ」
 執事さんはとてもニコニコしている。
 言葉以上に、私に対して喜んでいることが伝わってきた。

「というか、私は誰ですか?」

 何も覚えていないが、さして不安でもない。なぜなら――。

「カイナ・シノミヤ。それが君の名前だ」
 視界に巨大な影が入ってきた。
 けど私はすぐに緊張を解いた。あの大きな人だ。
「なるほど。それが私の名前なわけですか。了解いたしました」

「ここは安全な場所で、ここにいるのは私の大切な友人たちだ。何も心配はいらない」
「なるほど。心配いらないわけですか。了解いたしました」

 すると大きな人が私の手をガシッとつかみ、
「そして君は私の大切な女性でもある!」
 私は重々しく、
「なるほど。あなたは私の大切な方なわけですか。了解いたしました」

『え……』
 と、褐色肌のチンピラ、胸の大きなお姉様、青シャツの兄ちゃんが言う。

「カイナ、さっきから『なるほど』連発してるけどさ。それでいいの?」
 恐る恐ると言った感じで、胸の大きなお姉様が言う。

「いいんです。この方の言うことなら、何でも信じます」
 私はきっぱり言った。
「ありがとう、カイナ」
 大きな人が私をガシッと抱きしめる。痛い痛い。

「……何、あの好感度の高さ! 一回封印されかかってんのに、何であそこまで旦那を信用してんだよ!!」
「今やほとんど全ての記憶を希釈してしまっているからな。
 助けてくれたクラウスに恩義を感じているんだろう」
「恩義というか、ほとんど刷り込みですよね、あれ……」
 三人の方々がぼそぼそ言ってるが、聞いていない。

「あなたについていきます」
「君の信頼をとても嬉しく思う、カイナ」

 私たちは手を握りあい、何やら熱く見つめ合ったのであった。

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