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【血界戦線】紳士と紅茶を

第5章 終局



 …………

 その次に私はまた、色々と実験された。目的は知らん。
 それ以外は、真っ暗闇の中に監禁されていた。
 食べ物とか飲み物とか、そういうものは一切与えられなかった。

 夢では光の渦に食い荒らされる悪夢に悩まされた。
 なので眠らないでいて衰弱したけど、特に健康に問題はございません。どうせすぐ死ぬし。

 起きれば実験である。何の実験かは知らない。
 檻から出され血まみれになり止血も縫合もされずに帰ってきて、横になってまた死ぬ。
 水もご飯も何もない。
 
 いつか、優しい人がいて、ご飯をくれたり頭を撫でてくれたりした記憶がある。
 いやそんなこと、本当にあったんだろうか。

 思い出せない。

 思い出せと私を殴る人はいるんだけど、何も思い出せない。

 そういえば思い出しそうになったことがある。
 あれは拷問を受けてたときだったっけか。

 私の荷物を探ってた人が、『聖書』という本を見つけた。
 その頃、私はもう外部からの刺激には概ね無反応になってきてた。
 でも、そのときだけは過敏に反応した。
『聖書』を奪ってうずくまり、必死に隠そうとした。

 今から考えてもアホである。協力的じゃない実験対象が、そんな執着を見せたらどうなるか、火を見るより明らかであろう。

 連中、ゲラゲラ笑いながらあらゆる方法で聖書を侮辱し、引き裂き、最終的に靴で足蹴にして、ライターの火であぶって燃やしてしまった。

 私が泣き叫び、火傷しながら、素手で必死で火を消そうとするのを、もっと笑いながら見てた。

 うーむ、こっちも話してて嫌になってきた。いかんいかん。

 …………

 ただ地獄は永遠には続かなかった。
 だんだんと奇妙なことが起こってきたのだ。

 日が経つにつれ、彼らの声に少しずつ焦りが混じってきた。
 私は二十四時間、真っ暗な檻の中で、指一本動かせない状態で拘束されてるだけになった。

 あるとき彼らは私を引きずり出し、何かの呪式陣の前に転がした。

 私は服も与えられず、魔術陣の中心で痛みにうずくまっていた。
 彼らはしばらく何かの魔術で私を調べ、叫んだ。
 
「やはり”召還門”の術式が根本的に書き換えられている!!
 何重もの暗号と過密術式で気づかれないよう細工までして……。
 いったい誰がやったんだ!?」

 うるさい。苦しい。消えたい。もう嫌。


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