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【血界戦線】紳士と紅茶を

第4章 異変



 ホテルの部屋のドア。その外に、知らない人がいる!
 中に入ろうとしている!!

 私はパニックになる。
 まず考えたのは窓を突き破り、外へ逃げることだ。
 ダメ。私は確かに衝突死しても生き返るが、動けるようになるまで数時間はかかる。
 それまでに、外にいる奴らに回収されて終わりだろう。

「クラウスさん!!」
 
 スマホに飛びつき、クラウスさんに連絡しようとした。
「…………」

 でも手が止まる。もし戦闘中に連絡してしまい、クラウスさんの気がそれてしまったら?
 私を助けるため、戦力を分散させ、『血界の眷属』に後れを取るようなことがあったら?
 
「あ……!」

 銃声。部屋のロックを攻撃している。同時に、室内の私への警告。
 数秒後に侵入する。抵抗するなと。

『攻撃の意志を固めたら即、行動に移すこと。ためらったら、その瞬間に殺られる』

 スティーブンさんの言葉が、遅ればせながら思い出される。

 私は完全に判断を誤った。

 脱出でも連絡でも防御でも、どれでも正解だった。
 頭に浮かんだ瞬間に、それを実行に移すべきだったのだ。

「…………!!」
 明瞭な銃声。鍵が破壊された!! 扉が開いて、複数の足音がなだれこむ。

「!!」

 今度は間違わなかった。
 私はスマホをダストシュートに放り投げた。
 スマホはフタに当たって、音を立てて飲み込まれる。ホテル最下層の焼却処理上まで一直線に。

 これで、私を人質にクラウスさんに連絡が行くことだけは……。

 瞬間に、ものすごい痛みが襲った。
 私は頭から血を流し、床に倒れる。その頭を踏みつけられ、ガッと、情けない声が出た。

 武装した男たちに容赦のない力で殴られたのだと思い知った。

 何で、とは思わなかった。
 武装集団の後から来た奴らに、見覚えがあった。

 私の髪をつかみ、ガンッと殴りつけ、腹を蹴ったのは――『メビウスの輪』。


 私がかつていた魔導組織の、残党の人らであった。


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