第4章 異変
夢の中では、いつものようにひどい夢を見た。
たくさんの光が私を嘲笑し、また『トオレル』と言いまくって私を食い荒らす、そんないつもの悪夢。
もう慣れた。疲れた……。
…………
「カイナ。カイナ、起きたまえ!!」
「――っ!!」
大きな声に起き上がった。
すると大きい男の人が私を見下ろしているのが見えた。
とても怖い顔をしている。
――殴られる!!
「……っ!!」
私は伸ばされた手をパンッと振り払い、ベッドの隅に飛びすさると、頭とお腹を抱えて丸くなった。
そして数秒震え、ハッと我に返る。
クラウスさん……!
「すみません、でした……」
守りの姿勢を解き、震える声で言った。
「いや。無理もない」
だけどクラウスさんは強ばった声で続けた。
「カイナ。私の名前を言えるかね? 私と君との関係を答えることは? ここがどこか認識は出来るかね?」
私を怖がらせないように、極力優しく。だから答えられた。
「あなたはクラウス・V・ラインヘルツさんで私の大切な人。ここは、展示会近くのホテルです……」
言い終えるとクラウスさんは、緊張を解き深く息を吐く。
「良かった……」
そう言って、私を抱きしめた。痛い痛い痛い。
…………
「私、ちょっと眠っていたんですね」
「…………。一時間ほど」
クラウスさんはそっと私の頭を撫でてくれる。
私はクラウスさんの膝に頭を乗っけていた。
外は夕日の色に染まりかけている。
クラウスさんが近くにいるから、安心して寝てしまったみたいだ。情けない。
うう。私もスティーブンさんみたいに、翼を授ける栄養ドリンクを常飲すべきか。
するとクラウスさんが私を抱き上げ、ご自分の方に向き合わせた。
「カイナ。君は堕落王に拉致されてから、急激に容態が不安定になっている。
理由も無く、何度か死亡したことも知っている」
やっぱバレてたか。
そしてクラウスさんは沈黙し、
「先ほども――いちど、心臓が止まった。十分零秒経過後、また動き出したが」
クラウスさんの拳が、わずかに震えていた。
やはり一日一回の割合で自然死してるのか。
けど私以上に、クラウスさんがショックを受けてるようだった。