第4章 異変
今日は一回死んだだけで、特別変わったこともない平和な一日だった。
焼き肉屋での食事会も大盛況で終了(というか飲んだくれが大量発生)。
ギルベルトさんが全員にタクシーを手配し、私たちに丁重に挨拶して帰還された。
クラウスさんは、今日も私の家にお泊まりらしい。
今日は手をつないで普通に寝ればいいよねーと、別々にお風呂に入った。
……そしてパジャマ姿でリビングに戻ったら、クラウスさんがコタツを占拠されていた。
「そのコタツから出て下さい。そこ、私の場所ですから!」
「うむ。前向きに検討しよう」
「ンなジャパニーズ的応答、いらんわ! どいて下さい! ど・い・てっ!!」
クラウスさんの腕をつかみ、外に出そうとした。
……ビクともしない。
ちなみにこの男の体重は130kgオーバーである。
ついでに言うと、このコタツは省スペース仕様の小さめサイズ。
大きなクラウスさんが入った日には、それだけで満杯になってしまうのだ。
クラウスさんは私を見ず、湯飲みの緑茶を飲み、はーっと息をつく。モコモコの綿入れ『はんてん』が、様になっていた。
どこで買ってきた、それ。
あとコタツの天板には、ざるに盛ったミカン。
……日本かぶれのガイジンに見えるんですが。
「どいて下さいってば!! 昼間のことは謝ったでしょう!!」
昼間のこと。誰も見てないと思って、クラウスさんの観葉植物を貪り食ったこと♪
いや、過去に壮絶な飢餓体験しましてね。そのせいか、気がついたら草を消化出来るようになってたんですよ。
人間ってすごい☆
「そのことは気にしないでくれたまえ。君の習性を理解せず、手の届く場所に鉢植えを置いた私に非がある」
今、平然とディスられた気がするのだが。
く、クラウスさんに限ってそんなこと……!
しかし、クラウスさんが不機嫌なのは、観葉植物のことだけなんだろうか。
他にも何かある気がするんだけど……正直、思い当たることが多すぎる。
私は早々に、考えるのを止めた。
「クラウスさん~」
とりあえず後ろから抱きつき、すりすりしてみた。
すると。
「うむ」
いや、何が『うむ』なんですか。
何か偉そうっ!!