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【血界戦線】紳士と紅茶を

第4章 異変



 私は昼日の差す廊下をすたすた歩く。
「…………」
 振り向いた。そこには無人の廊下があるのみ。

 気のせいかな。誰かがいるような……。

 怖いなあ、このオフィス、幽霊とかいないですよね?
 ちょっと心配になり、廊下に置いてあった観葉植物の葉を、ぶちっと数枚むしって食べる。
「……?」
 今、『あっ』と誰かが言ったような。
 ぞっとして足早におトイレに駆け込んだ。

 …………

「あー、すっきりしました」
 ホッとして外に出る。
「…………」
 やはり気配があった。
 横を見るけど、誰もいない。手を伸ばすけど宙をつかむだけ。
 ヤバい。怖い。早足で廊下を戻ろうとした。
「?」
 私の足が止まる。
 見ると、廊下の途中に蔵書室があった。中は本でいっぱいだ。
「ほー……」
 好奇心でのぞいてみる。
 棚から何冊か手に取るけど……ダメだ。私程度の文章能力では理解不能だ。
「初心者魔術教本? こんな本も置いてるんだ……痛!」
 うわ。ページで指を切った。いったあ。
 指を舐めソファに座り、ちょっとだけ本を読んだ。

 …………。

 ガクッと身体の力が抜け、ハッと目が覚める。

 ああ、びっくりした。そして身体を確かめる。
 うーむ、さっきの切り傷が完治してる。
「何だ、死んだんですか」
「え、軽っ!?」
 誰かが真横で叫んだ気がして、驚いてソファから立ち上がる。

 周囲を見回すが、そこは静かな蔵書室だった。
 私は本を懐にこっそり入れ、慌てて蔵書室から出る。
 最近、定期的に死ぬなあ。まあどうでもいいや。

「あ、そうだ。おやつ用にさっきの葉っぱをもう二、三枚もらってこう♪……あれ?」

 行きの時、置いてあった観葉植物はどこにも無かった。

 …………

 オフィスに戻ると、クラウスさんが沈痛な面持ちであった。
 スティーブンさんが『ご苦労さん』と誰かに声をかけていたが、その相手が不思議とどこにも見当たらなかった。
 
「カイナ。大丈夫かね? 何か異常は!?」

 クラウスさんが憂いに満ちたお顔であった。こぶしが震えてらっしゃる気がする。
 とりあえず元気になっていただきたい。
「はい、日照時間が少々不足していて、あまり美味しくはなかったです」

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