第4章 異変
「『昨日のアレ』って……毎晩どんなプレイをやってんだよ、おまえら」
ザップさんも素に戻り、呆れたような顔。
しかし、クラウスさんが全力で真に受けてるから、収集つかなくなってきたなあ。
「まあまあカイナさん。その辺りで許していただけませんかな?」
ギルベルトさん。朝食のトレイを持ち、ニコニコされている。
何という天の助けっ!!
「坊ちゃまも深く反省しておられるようですし、どうかこのギルベルトに免じて」
クラウスさんがなぜか”うんうんうん!”という感じでうなずいておられる。
いったい、何の反省。何に免じてなんです。
『で、どんなプレイをしてるんだ? ザップ』
『まあ、あの身長差に加えて、旦那の性癖ですからねえ。俺の経験から言わせてもらえば、一番可能性が高いのは――』
そこの男性方! 何、ヒソヒソと下世話なことを話し合ってんですか!!
クラウスさんがどんな性癖を隠し持ってるって言うんですっ!!
激しい不安を感じるが、とりあえずクラウスさんに落ち着いていただかねば。
「すみませんでした、クラウスさん。今のは全部冗談です。
クラウスさんは何一つ、謝る必要はないですからね?
ご飯を食べましょう?」
「じ、冗談なのか!? それは本当に良かった……」
普通なら怒るとこだろうに、紳士は心底からホッとしたお顔である。
額の汗をぬぐい、
「君の可愛らしい嘘は、皆を本気にさせてしまうから気をつけてくれたまえ」
いえ、だまされたのはあなた一人です。
ギルベルトさんはテーブルセッティングを終え、
「さあお二人とも、どうぞ」
……なぜテーブルにパストラミビーフのベーグルサンドが用意されているのだろう。
これは今朝、『これじゃなきゃ食わねー』とクラウスさんにダダをこねたメニューだ。
以後、連絡する隙は与えなかったはずなのに。
渋々食べ始めると、私に紅茶を淹れるギルベルトさんと目があった。
ギルベルトさんは私に片目をつぶっただけ。
コンバットバトラー、すごい。
「おー、美味ぇ! やっぱギルベルトさんお手製じゃなきゃ、この味は出ねぇよなあ!」
勝手に私のベーグルを食うな、ザップ先輩っ!!