第4章 異変
「実はクラウスさんから別れ話を持ちかけられまして」
『はあっ!?』
殿方たちが一斉に叫ぶ。
朝食準備をするギルベルトさんだけが、ニコニコと平常運転であった。ちっ。
私はタオルハンケチをそっと目元にあて、
「わたくしのことは遊びだと。割り切った関係でいられないのであれば、もう関係をこれ限りにしようと……。
嗚呼(ああ)、わたくしがクラウスさんに本気になったばかりに……」
よよよ、と泣き崩れる。その私をザップさんがパシッと抱き留め、
「見損なったぜ、旦那! あんた、アレがアレでさらにアレだけど、こいつを泣かすことだけはしないと思ってたのによお!」
女を泣かしまくってる(同時に全力の反撃も食らっている)ザップさんが仰る。
アレって何すか。
スティーブンさんはあきれ顔でノーコメント。
だが私の言動を本気にする約一名がいた。
「カイナ!! 私がそんなことを言うはずはないではないか!!」
真っ青になって叫ぶ紳士。
「い、いや、もしや私の何かの発言が、君にそう受け取らせてしまったのだろか!?
もしそうだとしたら、どうか謝罪をさせてほしい!!
私が関係の清算を迫るなど、断じてあり得ない!!」
さっきのキリッとした責任者のお顔はどこへやら。
冷や汗までかかれている。
ザップさんはというと、えーんえーんと泣く私の背を叩き、
「気ぃ落とすな、チビ。何なら俺のダチを紹介してやるからよ」
前に一度言ったようなことを仰る。
「だからクズのお知り合いの時点で、クズな予感しかしませんて」
「カイナ、どうか別れないでくれたまえ! 昨日のアレは二度としないと約束する!!」
クラウスさん。どう脳内変換をしたのか、『カイナが別れたがっている』と思い込んだらしい。
皆さんの前で私に土下座をせんばかりだ。
さすがにちょっと申し訳なくなってきた。
ちなみにスティーブンさんはやはり『僕はアホらしいやりとりには関知しないよ』というお顔で作業を続けられている。
でも、さっきあなたが珈琲を噴きだしかけたの、私、ちゃんと見てましたからね?