第1章 出逢い
クラウスさんはすぐ、私ごとガレキを持ち上げてることに気づく。
「失礼いたしました! ミス・シノミヤ! あなたがあまりに軽いので気がつかず」
恐縮し、大慌てで私を下ろした。
「いえ、先につかまったのは私の方ですし」
言いながら私はハッとした。
クラウスさんの高そうなシャツが汚れてる!!
「すみません、すみません、すみません! もう十分ですので!」
オタオタしながら手ではらい、汚れが取れないかと虚しい努力をした。
「ん?」
そして気づく。クラウスさんがこっちを見下ろしてることに。
「な、何か?」
慣れてきたとはいえ、まだ大きい人は怖い。じっと見つめられると、じわじわと恐怖感がこみ上げる。
無意識に後じさりしかけ、
「うゎっ!!」
足下のガレキに足を取られ、真後ろに倒れかけ、クラウスさんにパシッと背中を支えられた。
「どうも……」
「やはり軽すぎる」
独り言のようにクラウスさんが呟いてた。
「は?」
「っ! いえ、失礼しました」
紳士は少し顔を赤くし、慌てて私から離れた。
まあ普段は物食ってませんからな。
といっても見た目はガリガリではなく、見合った体重があるように『見える』らしいけど。
「み、ミス・シノミヤ。休憩しましょう。それと、食事を取れないようなら無理な肉体労働は自殺行為です」
大丈夫、大丈夫。死んでも生き返るからー。
「そうですね。では私は勝手に食べるので、そろそろ……」
こうなったら力ずくでも、とクラウスさんの身体を出口の方に押そうとする。
「ぐっ……!」
ピクリとも動かない! そりゃそうですよね!!
「何をされているのですか?」
真剣に不思議そうに聞かんで下さい、みじめになるから!
「そういえば、新作のドーナツが出ていたので、買ってみたのですが」
クラウスさんは、楽しそうに紙袋をゴソゴソ探る。
瞬間に私は手のひらを返した。
「ささ、どうぞどうぞ! 聖堂の方へっ!!」
……餌付けされてないからね?