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【血界戦線】紳士と紅茶を

第1章 出逢い




「とりあえず、当面の目標は教会の復旧ですかね」

 私は腕組みし、建物面積が半分な上に屋根が失われた教会を見上げる。
 周辺が完全復興した中、うちだけ半壊とか恥ずかしいし、無人と見て乗っ取りに来る連中も絶えないので。まあ今のところ、結界でどうにか弾けてるけど。
 
『組織』のメンバーが全滅した当初は『どうにでもなれ』『静かに消えたい』みたいな気持ちだった。

 けど、最近は気持ちが少し前向きになり、これからの事を考えられるようになった。

『組織』の連中がいなくなったせいだろうか。
 ……いや。

『ミス・シノミヤ』

 ほぼ毎日押しかけてくる赤毛の紳士の笑顔(怖い)が頭に浮かんだ。すぐ、顔を真っ赤にして首を振ったけど。
 そしてハッとする。
「あー。ミスタ・ラインヘルツが来る時間だ」
 さすがにもう来るとは思えないけど、念には念をだ。
 今度こそ、隠れてやりすごさないと。
「ぐ……!」
 ぐぬぬと、デカ目のガレキを動かし、入り口あたりに配置する。
 これでバリケードを作り、紳士の侵入を阻止する!!
 あ、ほとんど運動してないので肩つりそう。

 …………

「ミス・シノミヤ、お邪魔を――どうされました?」
 紙袋抱えた紳士が駆け寄ってくる。
 私、筋肉痛でちょっとうめいてた。

 くそっ、馬鹿力紳士め!
 片手の一降りで、作るのに三時間かかったバリケードを崩しやがった!!
 まあ『バリケード』というか『バリケード(笑)』と表現する方が正確な出来だったけど。

「お一人で清掃をされていたのですか? 私が手伝いましょう」
 しかも単なる掃除だと思われてた!
 腕まくりすんな。虚しいから!

 だが紳士は半壊の教会に行くと、入り口側を塞いでいたガレキに取りかかる。
 すごい! 私が三時間かかっても動かせなかったガレキをヒョイッと持ち上げた!
 まるでガレキが発泡スチロールのごとく!
「て! いいですよ! そこまでしなくて……わっ!!」

 止めようと彼の片腕につかまったら、私まで持ち上がった!

 この浮遊感、何か楽しいっ!!
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