第4章 異変
時計の時刻は、相当遅い時間である。
クラウスさんは、ザップさんたちから事態収束の報告を電話で受け、彼らを直帰させた。
次いでスティーブンさんと明日の事について話し合い、彼にも帰らせ、ご高齢のギルベルトさんにも休んでもらった。
そしてお一人残って本部への報告を済ませた。
で、その足で私の家にいらしたのだ。
私はコタツで爆睡していた。
私の対応がありえねえ……!
クラウスさんの理想の恋人なら、ちゃんと起きていて、紅茶とケーキを用意し、『お疲れ様でした』と天使の笑顔で迎えるだろうに!
い、いやクラウスさんも遅いしコタツはあったかいし……眠かった。
クラウスさんは私の失礼な態度を気にした様子もなく、相変わらずコタツに取り憑かれている私に、
「カイナ。君をベッドルームに連れていって構わないかね?」
いそいそと私をコタツから出そうとした。
だが私はシュッとコタツの中に引っ込んだ。
するとコタツ布団の向こうから声がする。
「……カイナ。君は歩く必要はないから」
どこぞのお姫様か、私は。
「寒いから嫌です」
「ならば私もコタツに入っていいだろうか」
「悪いですね、クラウスさん。このコタツは三人用です。あなたの図体を三人分に換算すると定員オーバーです」
「それは残念だ。だが暖房直下で睡眠を取るのは良くない。低温火傷の危険があるし、脱水症状になる可能性がある」
ツッコミスキルが高くないのが、クラウスさんの悪いところである!
「でも大丈夫!」
死んでも生き返るっ!!『不死』で良かったぁ! コタツで寝ても大丈夫!!
「…………」
私はコタツの中でぬくぬくと眠りに戻ろうとした。
「……ん?」
消えた。
温かいコタツの光が消えた。
誰かがコタツのコンセントを抜いた!!
すると外の世界から二本の腕が入り、私をコタツから無理やり引き出した。
「――――!!」
想像を絶する非道な行為に声も出せないでいると、私の身体にふわりと毛布がかかる。
私は何重もの毛布で厳重にくるまれた。
クラウスさんは私をおくるみ状態にすると抱き上げ、鼻歌まじりに寝室に向かう。
「ひどい……」
私は大粒の涙を浮かべクラウスさんを凝視した。