第4章 異変
…………
クラウスさんを乗せた車が走り去り、やっと一息つく。
……来ないですよね。
セ×××、やらないですよね?
「い、一応、ちゃんと身体を洗っておこう」
念のため、念のため! 歩き回って身体も汚れてるし。
私は手早くバスルームに飛び込み、『念のため』念入りに身体を洗う。
ほかほかと暖まった後は、ベッドルームに急ぎ、大慌てで室内を清掃。
……あ、そうだ。
確認したいことがあり、そーっとベッドサイドテーブルの引き出しを開け――ガクゼンとした。
なぜ『例の箱』が増えている!!
これ全部消費するまで頑張るつもりか、クラウスさん!!
というか、いつの間に入れた!! 記憶に覚えがないぞ!!
わなわなと引き出しを閉め、『例の箱』を思考から閉め出した。
――しかしよくよく考えると、この家、半分くらいラインヘルツ家に支配されてないか?
だいたい建てられた経緯からして、私はこの家の間取りに一切、携(たずさ)わってない。
客室のうち一つはクラウスさん専用書斎で、ご本人の衣類や私物、書籍類もある。
もちろんあちこちに私の非常食――じゃなかった、クラウスさんの園芸植物がある。
倉庫に入れてある物品は、私よりギルベルトさんの方が詳しい。
もちろん、クラウスさん(とギルベルトさん)はこの家の鍵を持っていて、いつでも勝手に入れる。
……というか多分いや絶対、時々勝手に入られてる。
でなければ、園芸植物がこんなにピンピンしている理由が説明がつかない。
「ヤバい。ここは私の城だというのに……」
何か一時間前まで、もっと重大で差し迫ったことで悩んでいた気もする。
しかし忘れっぽさに定評のあるわたくし。
とっとと今日あった嫌なことを忘れてしまった。
…………
「そういうわけで、考えたのです。人は誰しも、神聖不可侵なパーソナルスペースを持つべきであると」
「その意見には大いに賛同する。どんな存在であろうと、他人の干渉を受けない安全地帯を持つ権利があるべきだ――だが」
私の意見に、重々しくうなずいてくれるクラウスさん。
「だが?」
「それと、君がコタツに引きこもることは何か関係があるのかね?」
クラウスさんはコタツの前に正座し、私の耳たぶを、ふにふにと揉みながら言う。
触んな!